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経過措置

経過措置

過去を引きずる年金制度

よく年金制度は複雑すぎると言われます。
その理由のひとつに、「年金制度は過去を引きずる」という特性が挙げられると思います。

人が大人になると、年金制度に加入し保険料を支払うようになります。
それも40年程度というかなりの長期間加入してから、今度は年金(老齢年金)を貰う立場になります。
老齢年金は死ぬまで貰えますから、年金を貰う期間も20年程度はあるでしょう。
合計で60年です。

当然その間に社会は変わります。
年金制度も社会の変化に対応して変えていかなければならなくなります。
年金制度は非常に長期間にわたる制度ですから、改正しても制度が一気に変わるわけではありません。

年金制度は非常に長期間にわたる制度ですから、年金制度が変わると、古い年金制度に加入していた人と新しい年金制度に加入する人に分かれたり、一人の人でも、古い年金制度に加入していた期間と新しい年金制度に加入していた期間が混在することになるからです。

もし、年金制度の改正によって、古い年金制度の加入期間がある人が、不利益を被ることが想定されるとしたら、古い年金制度の既得権をある程度の期間は残しておく必要があります。
実際には、年金制度を変えたときに、「経過措置」として、一定期間古い年金制度のルールを残しておくという方法が取られています。
そのため、年金制度にはたくさんの「経過措置」が残っていて、それが制度の複雑さを助長しているのです。
つまり、「経過措置」という形で新旧制度が混在しているのが現在の年金制度なのです。

代表的な経過措置

現在の年金制度は、昭和60年の大きな改正(昭和61年から施行されたので「昭和61年改正」と呼ぶ場合もあります)をベースにしています。
それ以前もそれ以後も年金制度は何回も改正しているのですが、それらはいわゆる「マイナーチェンジ」で、昭和60年改正はいわゆる「モデルチェンジ」と捉えてよいでしょう。
年金法の世界では、昭和60年改正前の年金制度を「旧法」とか「旧制度」といいますが、現在残っている「経過措置」は、この「旧法」の名残です。

前置きが長くなりましたが、現在残っている代表的な「経過措置」を挙げてみましょう。

以上の経過措置の詳細は、別途詳しく説明します。

世代によって形が異なる年金制度

これらの経過措置は、世代別に適用されます。
基本的には、若い世代になるほど「経過措置」が減っていき、最後にはなくなります。
概ね昭和41年以降に生まれた世代には、現在残っているほとんどの経過措置は適用されなくなります。
したがって、昭和41年以降に生まれた世代にとっては、年金制度はある程度シンプルになります。

現在の年金制度は新旧制度が混在していると言いましたが、別の言い方をすれば、年金制度は世代によって幾分異なるということです。
経過措置」が適用されない世代にとっては、旧制度は混在してはいないわけですから。

したがって、一般の人たちが年金制度の解説を、テレビや雑誌等で見たり、読んだりするときに、大事なことは、「その解説が自分に当てはまるのかどうか」です。

例えば、あるテレビ番組で「年金支給は61歳から」ということを言っていたとしたら、これに該当する世代は、昭和28年4月2日から昭和30年4月1日までに生まれた男性のサラリーマンに限定されます。
また、「年金65歳支給」という話が出ていたら、それは「経過措置」を除外した原則的な年金制度の話なので、「経過措置」に該当する人にとっては間違った話になります。
経過措置が適用されない世代の人も、経過措置の概要ぐらいは知っておかないと、「自分に関係ある話」かどうか判断できません。

年金制度には、こうした厄介な面があります。

民主党の年金改革案

以前、民主党が政権を取ったときに、まったく新しい年金制度(最低保証年金+所得比例年金)を作るという話がありました。
結局、民主党は年金改革できずに政権から退いたわけですが、当時一部で「新年金制度になるまで40年かかる」ということが言われました。

その理由は、新年金制度を作ったとしても、すべての加入期間が新年金制度の加入期間になるためには、40年程度の期間が必要だということです。
すべての加入期間が新年金制度である人が、年金受給年齢になって、初めて完全な新年金制度の年金が支給されるわけですが、その時期は、新年金制度ができてから約40年後になってしまうわけです。
それ以前の受給者は、やはり、新旧制度が混在した年金になってしまいます。
さらに、しばらくは現段階自体が新旧混在状態ですから、もし、民主党案が実現していたら、しばらくの間は三世代混在の年金制度になるところでした。

複雑さが批判される年金制度ですが、シンプルな制度にしようとしても、年金制度の「過去を引きずる」性格から、一時的には今より複雑になってしまうということです。

厄介な制度ではあります。

2015.5.16
2015.7.22一部修正

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