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社会保険給付と労務 その5(短期給付と長期給付)

社会保険給付と労務 その5(短期給付と長期給付)

傷病が1年6ヵ月で治らない場合

私傷病退職者のテーマを続けます。

もし、傷病が「傷病手当金」の支給開始から1年6ヵ月経っても「労務不能」の状態だった場合はどうなるでしょうか。
「傷病手当金」の支給要件である、「労務不能」の状態であっても、支給開始から1年6ヵ月経ってしまえば、「傷病手当金」はもう受給できません。
このような場合、絶対とまでは言い切れませんが、1年6ヵ月経ってもまだ「労務不能」な状態であるほどの症状であれば、障害年金が受給できる可能性があります。

障害年金の支給要件

障害年金の支給要件は、①その障害の元となった傷病の初診日に年金の加入者であったこと、②保険料納付要件、③障害認定日における障害の程度、です。

初診日の年金制度加入の要件

要件①は、会社員であれば、「初診日」時点で普通なら厚生年金に加入していたはずです。
厚生年金加入者であれば、障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金が支給対象の年金です。
ただ、障害の程度によっては、「障害厚生年金」しか受給できないこともあります(後述)。
「その障害の元となった傷病の初診日」ですが、可能性としては、労務不能になるほど重くなる前から診療を受けていたということも考えられ、この場合の初診日は「以前受けた診療の初診日」ということになり、もし、この時会社員でなければ「初診日」時点で厚生年金加入者ではなく、そのとき20歳以上であれば、国民年金の保険料を支払っていたことが必要となります。

なお、「初診日」に会社員ではなく、なおかつ20歳前であれば、「20歳前の障害基礎年金」の対象となります。
「20歳前の障害基礎年金」は通常の「障害基礎年金」と違い、所得との調整があります。

保険料納付要件

要件②の「保険料納付要件」ですが、これは保険料をきちんと納めていたかどうかが問われます。

「保険料納付要件」とは、「初診日」の属する月の前々月以前の年金加入義務期間に、保険料の滞納や未納がその期間の3分の1を超えてはいけないというものです。
法律的には、「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の2以上」となっています。
「保険料免除期間」とは、保険料を納付しないことが法律上の「義務」を果たさないことにはならない期間ですから、逆に見れば滞納や未納がないということです。

厚生年金加入期間は給料から厚生年金の保険料を天引きされますから、滞納ということはあり得ず、かつ国民年金の加入期間でもありますから、イコール「保険料納付済期間」です。

なお、「滞納」も「未納」も言い方やニュアンスは多少違いますが、法律的には同じことです。
また、経過措置ではありますが、「初診日」の属する月の前々月以前1年間に滞納や未納がなければ、「保険料納付要件」は満たしたことになります。

障害認定日における障害の程度

要件③の障害認定日における障害の程度ですが、「障害認定日」については後述するとして、「障害の程度」は重い順から1等級から3等級まであります。
このうち、3等級は「障害厚生年金」だけ、2等級以上は「障害基礎年金+障害厚生年金」の2階建て年金が支給対象です。
1等級と2等級の違いは、年金額で、1等級は2等級の25%アップとなります。

ただし、「初診日」当時厚生年金加入者ではなく、国民年金加入者だったとしたら、「障害厚生年金」は対象外になるので、事実上1等級又は2等級に該当しなければ受給できず、「障害基礎年金」だけの1階建て年金になります。

障害認定日

障害年金における「障害認定日」は、傷病が治癒して障害が残った日か症状が固定化した日、または初診日から1年6ヵ月が経過した日とされています。
冒頭で、「1年6ヵ月経過しても労務不能の状態が続いている場合」と仮定したのはこのためです。

ただし、傷病手当金の支給開始日と障害年金の初診日は異なる場合もあり、さらには傷病手当金の支給開始日の1年6ヵ月前に症状が固定化することも考えられますから、傷病手当金の支給終了と障害年金の障害認定日が一致するとは限りません。
つまり、障害年金と傷病手当金の支給期間が重複する可能性もあるということですが、少なくとも、傷病手当金の支給期間の終了とともに何のセーフティネットもなくなるという事態は避けられるわけです。
給付が重複した期間は、給付間の調整(相殺関係)があるのですが、最低限給付額が高い方の収入は保証されることになります。

短期給付と長期給付

健康保険の給付を「短期給付」、年金を「長期給付」と呼ぶことがあります。
傷病手当金の支給期間が「1年6ヵ月」、障害年金の障害認定日も「1年6ヵ月」です。
つまり、「1年6ヵ月」という期間は「短期給付」と「長期給付」の境ということであって、ここから短期給付が長期給付にバトンタッチされると捉えておくと、社会保険制度全体の理解が多少深まるのではないかと思います。

なお、傷病退職者の傷病が重く、かなり長引きそうだったら、傷病手当金の支給期間が終わったら障害年金が受給できる可能性があることも教えてあげるべきです。
このページで書いたほど詳しくなくてもよく(詳しすぎる説明は逆に理解を妨げますから)、「可能性がある」程度のことは教えておくべきでしょう。
やはり、これも「知ってるかいないか」が明暗を分ける性質のことですから。

2015.3.21

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