65歳前の在職老齢年金
65歳前の在職老齢年金
「60歳台前半の老齢厚生年金」ともいいます。
65歳前の在職老齢年金の計算式
65歳前の在職老齢年金の計算式は、次の通りです。
- 支給停止額=(年金月額+総報酬月額相当額-28万円)÷2
用語の定義
- 「年金月額」:文字通り1ヵ月分の年金額で、年金額(年額)を12ヵ月で割った額になります。
- 「総報酬月額相当額」:一言で言えば「賞与込み賃金」です。
- 法律上の定義: 「標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与額の総額を12で除した額を加えた額」
- 「賞与込み賃金」の「賃金」の部分は、社会保険制度上の月給で「標準報酬月額」といい、一定のルールにより、実賃金額を切の良い額に当てはめるものです。
- 「標準報酬月額」の元となる実賃金には、通勤手当のように、一般の人が賃金と認識していないものも含む点、注意が必要です。
- 「賞与込み賃金」の「賞与」の部分が少し厄介です。賞与とは、一般的には、あらかじめ決められた額ではなく、企業や社員個人の実績等に左右されますから、その額が確定されるためには、その支給がなされる必要があります。
- したがって、過去の実績でその「月換算額」を算出しなければなりません。
- 具体的には、「直近1年間の支給実績」により月換算額を算出します。
- なおかつ、やはり、社会保険上の賞与である「標準賞与額」というものが用いられます。
- 「標準賞与額」とは、実際に支給した賞与の額を、千円未満を切り捨てた額で、1回し支給に関しては150万円が上限になります。
- 例えば、1回の賞与が180万円であろうと、200万円であろうと、150万円以上なら、社会保険上の賞与額は、上限である150万円になるということです。
- 法律上の定義: 「標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与額の総額を12で除した額を加えた額」
- 「支給停止調整開始額」:「28万円」は、法律的には「支給停止調整開始額」といって、賃金水準の変動に応じて1万円単位で変動することになっていますが、この額はまだ一度も変わっていません。
- この額は、高い方が支給停止基準が緩むことになります。
「在職老齢年金」の計算式を以上の定義を踏まえた上で、わかりやすい表現に変えると、
- 支給停止額=(年金月額+賞与込み賃金月額-28万円)÷2
となります。
ようするに年収が高いほど、支給停止額も高くなり、実際に受給できる年金額は低くなります。
支給停止額が年金月額以上になれば、年金は全く受給できません。
賞与のいたずら
「総報酬月額相当額」とは、簡単に言えば「賞与込み賃金」で、法的な定義は「標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与額の総額を12で除した額を加えた額」です。
わかったような気がするかもしれませんが、現実問題としては、結構やっかいです。
何故なら、「総報酬月額相当額」の「賞与」の部分に関しては、時系列で捉えなければならなくなるからです。
「総報酬月額相当額」の「賞与」の部分を時系列にみると、賞与の支払いの都度、「その月以前1年間に支払われた標準賞与額の総額」は更新されることになり、「賞与部分」の変動により、「総報酬月額相当額」も変動することになります。
それにより年金受給額も変動します。
平成24年度までに60歳になった男性は、そのほとんどが会社の定年・再雇用によって、賃金のみならず賞与も大幅に減額されることが常でしたから、賃金が下がっても、定年前の高い賞与が、一定期間「総報酬月額相当額」に含まれることになります。
そのため、年金が実際に支給されるのが定年数ヵ月後になるというような、大きな「賞与のいたずら」がありました。
ただ、平成25年度以降に60歳になった男性からは、年金支給開始年齢が61歳以上になりましたから、定年・再雇用で賞与が下がった場合でも、年金支給まで1年間以上の期間があり、定年前の高い賞与は消えます。
よって、現在では、「賞与のいたずら」はさほど留意しなくても済むようになりました。
しかし、それでも、賞与を時系列で捉えるということはやはり必要でしょう。
2015.7.10