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高齢期の妻が受給する遺族厚生年金

高齢期の妻が受給する遺族厚生年金

妻の老齢厚生年金と遺族厚生年金

前回、「妻の老齢厚生年金は遺族厚生年金に吸収される」と述べました。
このことについて、少し補足説明しておきましょう。

以前は、妻自身の「老齢厚生年金」と夫の死亡による「遺族厚生年金」は、いずれかを選択受給することになっていました。
つまり、両方を受給することはできなかったということです。

それが、平成19年度から(この改正自体は平成16年の年金改正の改正事項ですが、施行されたのが平成19年度からです)現在のような「妻自身の老齢厚生年金が優先支給され、遺族厚生年金はその差額を支給」という「調整方式」になりました。
「相殺方式」と言っても良いかもしれません。

改正前は、一般的に、女性の厚生年金加入期間は少ないですから、遺族厚生年金の方が妻自身の老齢厚生年金より高いことが多く、そうであれば当然年金額の高い遺族厚生年金を選択受給することになります。
結果的に、妻の老齢厚生年金は夫が死亡するまでの有期年金のような形になります。

しかし、それでは、妻は何のために厚生年金の保険料を支払っていたかということになります。
実際に厚生労働省にそのような苦情が寄せられていたらしいです。
なぜそのようなことが言えるかというと、平成16年の年金改正当時、厚生労働省自身が、改正理由として、「自分自身が納めた保険料を年金額に反映してほしいという主婦層の声に応えた」と言っていたからです。

しかし、「自分自身が納めた保険料を年金額に反映してほしいという主婦層の声に応えた」という厚生労働省の言い分は一種の「詭弁」だと思います。
この調整方式は「相殺方式」で、結局は改正前と年金額自体は変わりません。
「妻自身の老齢厚生年金+遺族厚生年金と妻自身の老齢厚生年金との差額」=「遺族厚生年金の年金額」ですから。

改正前であれば、全額が「遺族厚生年金」だったものが、一部が年金の名義上「老齢厚生年金」になるだけです。
しかし、単に年金の名義が変わるだけではありません。

遺族年金は非課税ですが、老齢年金は課税対象。
遺族厚生年金は在職老齢年金対象外ですが老齢厚生年金は在職老齢年金の対象。
といったように、老齢年金の方が受給者にとって不利益になるケースが想定されるのです。

年金しか収入がなければ、少なくとも公的年金等控除(120万円)と基礎控除(38万円)、それに社会保険料控除の額を超えなければ、年金には課税されませんから、実際に不利益を被るご婦人は少数とは思います。

また、在職老齢年金も65歳を過ぎて、会社に勤め比較的高い給与を貰っている人しか年金の支給停止はありませんから、こちらも実際に不利益を被るご婦人は少ないと思います。

しかし、改正によってレアケースとはいえ、不利益を被る人が想定されるのに、「自分自身が納めた保険料を年金額に反映してほしいという主婦層の声に応えた」と言ってしまうのはどうなんでしょう。
私は年金財政を心配していますから、このような改正自体には反対ではないのですが、その「理由づけ」には納得ができません。

遺族厚生年金が夫の老齢厚生年金の4分の3以上になるケース

遺族厚生年金の額は、原則「死亡した夫の老齢厚生年金の4分の3」になります。
しかし、特例的な計算方法として、「妻自身の老齢厚生年金の2分の1+原則的な遺族厚生年金の額の3分の2」という計算方法があります。
この特例は遺族厚生年金の受給者となる妻が65歳以上の場合にのみ適用され、原則額と比べて特例額の方が高い場合には、特例額が遺族厚生年金の額になります。

では、どのような場合に特例額の方が高くなるのでしょうか?

原則的な遺族厚生年金とは夫の老齢厚生年金の4分の3ですから、その3分の2とは、言い換えれば夫の老齢厚生年金の2分の1になります(4分の3×3分の2)。
ということは、特例では夫の老齢厚生年金の半額と妻の老齢厚生年金の半額を足した額になります。
この額が、夫の老齢厚生年金の4分の3より高くなるケースは、私は数学が苦手なので、高度な数式は使えませんので、事例で考えてみます。

原則額が75として、下記事例と特例額を比較してみてください。

  1. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:0の場合(特例:50)
  2. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:25の場合(特例:62.5)
  3. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:50の場合(特例:75)
  4. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:75の場合(特例:87.5)
  5. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:100の場合(特例:100)
  6. 夫の老齢厚生年金:100、妻の老齢厚生年金:120の場合(特例:110)

上記の事例3番のように、妻の老齢厚生年金は夫の半額のケースで、ちょうど原則と特例が同額になり、4番のように妻の老齢厚生年金が夫の老齢厚生年金の半額を超えているケースでは、特例の方が年金額が高くなっています。
その高くなり方は、妻の老齢厚生年金が夫の老齢厚生年金の半額を超えた額の半額です。

妻の老齢厚生年金は夫の老齢厚生年金と同額以上(5番、6番)だと、やはり特例の方が高くなりますが、「差額」が生じないので、結局遺族厚生年金は受給できません。
事例の6番に至っては、特例の方が原則より高いですが、自分の老齢厚生年金よりも遺族厚生年金の方が高くなってしまいます。

もちろん、1番から5番も遺族厚生年金として受給できる額は、妻自身の老齢厚生年金との差額です。

結論を言うと、「妻自身の老齢厚生年金の2分の1+原則的な遺族厚生年金の額の3分の2」という「特例計算」によって、遺族厚生年金が原則額より高くなるケースは、「妻自身の老齢厚生年金が夫の老齢厚生年金の半額を超え、同額未満の範囲」ということになります。
同額以上だと差額がないので、夫の死後も妻自身の老齢厚生年金がそのまま続くだけです。

遺族厚生年金は、年金額の高い方から低い方へ

もし、妻が夫より早死にしたらどうなるでしょうか?
その場合、他の要件(妻の死亡時に夫の年齢が55歳以上、年収が850万円未満等)を満たせば、夫にも妻の死亡による遺族厚生年金の受給権が発生しますが、夫の老齢厚生年金の方が遺族厚生年金以上なら、差額が生じないので、結局は受給できません。

通常、夫の老齢厚生年金が妻の老齢厚生年金より低いことは「レアケース」ですから、夫には遺族厚生年金はほとんど縁がないと言って良いと思います。
ただし、夫婦共稼ぎで妻の方が高所得、かつ職歴のブランクがないという夫婦では、妻が早死にした場合に、夫が遺族厚生年金を受給できる可能性はあります。
それでも、一般的には女性の方が寿命が長いわけですから、やはりレアケースと言って良いと思います。

結論。
「遺族厚生年金は年金額の高い方から低い方へ流れる」ということです。

2015.8.16

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