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雇用保険改正案を考える

雇用保険改正案を考える

法律の改正案を調べて、労務に対する影響などをあらかじめ考えておくことも私たち社会保険労務士にとっては大切なことです。
法律の改正案等の情報は、主に、メールマガジン「労働情報」や社労士会からの情報(メール)、専門誌等によってキャッチするわけですが、今年(平成28年)になって、早速「雇用保険法の一部を改正する法律案」が、国会に提出されました。

雇用保険法改正案

今回の改正案は、すでに厚生労働省がその概要を公表しています。
主な内容は、

  1. 雇用保険料率の引下げ(平成28年度施行予定)
    1. 平成28年度の雇用保険の保険料率が1000分の2引き下げられます。
  2. 育児休業、介護休業関係(平成29年度施行予定)
    1. 有期雇用者の育児休業、介護休業の取得基準の緩和と明確化、介護休業の分割取得可能に(育児・介護休業法)
    2. 育児休業給付の対象となる「子」の範囲を拡大(特別養子縁組の監護期間にある子等も対象となる)
    3. 介護休業給付の給付率を40%から67%に引き上げる。(平成28年9月施行予定)
  3. 65歳以上の高年齢者の雇用保険適用
    1. 65歳以降に新たに雇用される者も雇用保険の適用対象に(平成29年度 施行予定)
    2. 64歳以上の保険料免除措置の廃止(平成31年度から)
  4. 就職促進給付の充実(平成29年度 施行予定)
    1. 就職促進給付の給付率を10%アップ(支給日数:1/3以上を残した場合 残日数の50%→60% 2/3以上を残した場合 残日数の60%→70%)

以上、細かいところは省略していますが、主要な改正内容です。

高年齢者の雇用保険適用

今回の改正案が成立したとして、従来と大きく変わるところは、3の高年齢者の雇用保険適用でしょう。

従来、雇用保険の役割は、年金が完全支給される65歳までとされていました。
そのため、65歳以降に新たに雇用される者は雇用保険の適用対象外で、65歳前から適用されていた人に関しては、65歳以降も適用ですが、これまでの「一般被保険者」から「高年齢被保険者」という被保険者に変わります。
そして、「高年齢被保険者」に対する失業給付は、「一般被保険者」に対する「基本手当」ではなく、「高年齢求職者給付金」という一時金になります。

今回の改正案では、65歳以降に新たに雇われる者も雇用保険の被保険者となりますが、被保険者の種類はこれまでと同様の「高年齢被保険者」になり、失業給付もこれまで通り「高年齢求職者給付金」という一時金です。

何が変わるかというと、これまでなら、65歳以降の再就職後は雇用保険の給付を受給するチャンスはなかったのですが、今後(改正案が成立すれば)は、受給可能性があるということです。

例えば、65歳で会社を退職して、給付を受給したのち再就職して、1年6ヵ月以上勤めた後にまた退職、さらに給付を受給し、また再就職して1年6ヵ月以上勤めた後に退職、というように退職と再就職を繰り返せば、何回も給付を受給することができます。
そして、少なくとも改正案要綱では雇用保険の適用上限年齢は示されていませんから、体力が続く限り、上記のプロセスを繰り返せるのではないでしょうか。
もっとも、65歳以降にそんなに何回の再就職することは現実的には難しいでしょうけど。

付随して、64歳以上の高年齢者の免除保険料制度がなくなります。
こちらは、会社にとっては、雇用保険の保険料負担が幾分重くなりますね。
ただ、免除対象高年齢者がいなくなると、労働保険の年度更新の書き方がシンプルになって、業務が楽になるかな。

労務への影響

社会保険労務士としては、高年齢者の雇用保険適用が会社の労務に与える影響も考えておかなければなりません。
適用されることで、65歳以上の人を雇った時に、これまで必要なかった、雇用保険被保険者資格取得届の届出が必要となりますが、この辺は事務的なことで、もっと根本的な労務への影響はないでしょうか。

実は、私が考えている「65歳以上のフレキシブル雇用」に多少の影響があるかもしれません。

「65歳以上のフレキシブル雇用」とは、65歳以上は年金が支給されるので、働き手にとって、経済的にどうしても働かなければならないとう制約は少なくなります。
それで、例えば、繁忙期だけの有期雇用や、パート、もちろん会社が求めればフルタイムというように、会社のニーズに合わせたフレキシブルな雇用形態が可能と考えられます。

特に、「繁忙期だけの有期雇用」は目玉で、労働基準法の改正(こちらは改正がまだ実現していませんが)により、月60時間超の残業の割増率が50%になった場合を見越して、一般社員の残業抑制に役立つと想定していました。
しかし、65歳以降も雇用保険適用となると、失業給付を受けるためには最低1年6ヵ月以上の雇用保険加入期間が必要で、そうなると、「繁忙期だけの有期雇用」は、繁忙期が短い場合には労働者の権利とバッティングしてしまいます。
多少の障害になる可能性はあるでしょう。

年金支給開始年齢との関係

65歳以降も雇用保険適用は、将来の年金支給開始年齢引上げのための布石と捉えられないこともないですね。
年金支給開始年齢を65歳以上に引き上げるとなると、65歳以上の雇用保険適用者も「一般被保険者」にする必要がありますから、まだ、何とも言えないわけですが、とりあえず2段階の階段の1段目を登ったという見方もできるますね。

2016.1.31

2016.2.20
一部修正:高年齢求職者給付の受給資格は最低6ヶ月、よって「1年以上」は誤りなので、誤り箇所に取り消し線、訂正、追加部分に下線

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