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繰上げの損益分岐点

繰上げの損益分岐点

繰上げの損得

年金の繰上げは、繰り上げる月数に応じて減額されますが、早く年金を受給できます。
早く年金を受給すれば、最初のうちは「得」ですね。
本来の支給開始年齢前に受給する年金は、本来なら受給できなかったわけですから。

年金の繰上げと本来受給を競争に例えてみましょう。
年金額を走るスピードに置き換えれば、繰上げ受給は、減額分だけ、本来受給よりもスピードが遅いということになります。

つまり、繰上げ受給すると、走るスピードは遅くなりますが、本来受給より早くスタートが切れるということになります。
そして、本来受給は、遅れてスタートする代わりに走るスピードが速いので、いつかは繰上げ受給を追い越します。

そうすると、繰上げ受給は、本来受給に追い越される前にゴールすれば勝ち、ゴール前に追い越されれば負けということになります。

この「例え」の「ゴール」が意味するところは、年金受給の終了、老齢年金は終身年金ですから、年金受給の終了は「死亡」を意味します。

つまり、繰上げの「損得」とは、早死にすれば「得」、長生きすれば「損」ということです。

繰上げの損益分岐点年齢

では、繰上げの損得の分岐点となる死亡年齢は、何歳になるでしょうか?
この年齢を仮に「損益分岐点年齢」と名付けましょう。

現行の繰上げ制度の「繰上げ減額率」は、平成14年度頃(記憶です)に、それまでの減額率を平均寿命の延びに応じて改定されたものです。
当時の男性の平均寿命は、77歳ぐらいだったはずです。

それで、「繰上げ減額率」は、60歳から繰上げ受給した場合に、当時の男性の平均寿命で損益が拮抗するように設定されました。

繰上げの「損得分岐点年齢」を、計算式で表現してみましょう。

まず、5年繰上げ(60歳から受給)するケースです。

5年繰上げの減額率は30%ですから、30%減額されて本来額の70%になった年金を5年分先に受給できます。
つまり、70%×5年分で、本来の支給開始年齢前に本来額の350%分を先に受給することになります。

本来受給の場合は、5年遅れて、年金額は100%ですから、繰上げ受給より30%分多い額を受給できます。
したがって、「350%÷30%」で、本来の支給開始年齢後11.67年で繰上げの先取り分に追いつくことになります。
0.67は約8ヵ月ですから、本来支給年齢の65歳+11年8ヵ月で、76歳8ヵ月が、60歳(5年繰上げ)から受給した場合の「損益分岐点年齢」になります。

これで、平成14年前後の男性の平均寿命とほぼ一致しますね。
しかし、今は、平均寿命はもっと延びていて、男性でも80歳ぐらい、女性は87歳ぐらい近づいています。
したがって、平均寿命という統計に基づいて考える限りは、繰上げ受給は「損」をする可能性が高いということになります。

平均寿命ではなく、繰上げ受給を検討する可能性が高い年齢を60歳前後と仮定して、60歳の人の「平均余命」で考えてみます。

平成26年度の簡易生命表によれば、60歳男性の平均余命は、19.29年、つまり60歳+19年ちょっとですから、79歳ぐらいまで生きる可能性が高いことになり、女性は28.68年ですから、89歳少し前まで生きる可能性が高いということになります。

「平均寿命」とは、0歳時の平均余命であって、0歳のときに年金の繰上げを考える人はいません。
したがって、「平均余命」で考えた方がより合理的で、そうすると、繰上げで損をする可能性はより高くなります。

他の年齢での繰上げの場合

5年繰上げではなく、4年とか3年、2年、1年繰上げの場合はどうなるでしょうか?

繰上げは1ヵ月単位ですが、便宜上1年単位で計算してみましょう。
1年繰上げの減額率は、6%。
1年繰り上げることにより本来支給開始年齢前に1年年金を受給でき、その額は、本来額の94%になります。
本来受給は1年繰上げ受給より6%分年金額が高いので、早く受給した94%分は、本来受給年齢から94÷6=15.67年の年数で追いつかれることになります。
15.67年は、ほぼ15年と8ヵ月です。

したがって、2年繰り上げて64歳から年金を受給する場合の「損益分岐点年齢」は、65歳+15年8ヵ月で、80歳と8ヵ月。

同様に、2年繰上げの場合、減額率12%で88%分を2年先に受給で176%分先取り、176%÷12%で、65歳から14年と8ヵ月で損益分岐点。
つまり79歳と8ヵ月が「損益分岐点年齢」。

3年繰上げの場合、減額率18%、先取年金額82%×3年分で246%分。
246%÷18%で13年8ヵ月。
65歳+13年8ヵ月で、78歳と8ヵ月が「損益分岐点年齢」となります。

4年繰上げの場合、減額率24%、先取年金額76%×4年分で304%分。
304%÷24%で、12年8ヵ月。
65歳+12年8ヵ月で、77歳と8ヵ月が「損益分岐点年齢」。

法則

何歳から繰り上げてもなにか法則性がありますね。
60歳、61歳、62歳、63歳、64歳のいずれの年齢で繰り上げても、繰上げ受給年齢から16年8か月後に「損益分岐点年齢」が来ているということになります。

表に整理してみます。

繰上げ受給年齢損益分岐点年齢
60歳76歳8ヵ月
61歳77歳8ヵ月
62歳78歳8ヵ月
63歳79歳8ヵ月
64歳80歳8ヵ月

なお、老齢厚生年金と老齢基礎年金の繰上げの場合は、2つの年金の繰上げ月数が異なるため、減額率も異なります。
よって、上表は当てはまりません(上表は、あくまでも「老齢基礎年金の繰上げ」です)。

また、単純な老齢基礎年金だけの繰上げの場合は、上表が当てはまるわけですが、物価・賃金変動率による年金額改定(マクロ経済スライドも含む)の影響があり、微妙に異なってくる可能性もあります。

繰上げの考え方

これまで述べてきたように、年金の繰上げは、少なくとも統計上の平均余命を指標にして考えると「損」をする可能性が高くなります。
しかし、さらに大切なんことは、「得」をするためには早死にをする必要があるということです。

統計がどうあれ、個々の人の寿命はわかりませんから、人によっては「得」になることも多いに考えられます。
ただ、国の老齢年金は「終身年金」であって、生きている限りは支給され続けます。
「貯金」であればいずれは尽きることもありますが、終身年金は生きている以上は尽きません。
したがって、老齢年金には「長生き保険」という側面もあって、「繰上げ」という制度は、この「長生き保険」という機能を阻害するものであるということを、私見として申し添えておきます。

2015.8.30

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