社労士の営業と出版
社労士の営業と出版
先日、所属している社労士会の支部で、新人オリエンテーションという催しで、私は、「開業体験談」を30分ほどお話しさせていただきました。
その中で、私はいくつかの著書を出版していますが、営業下手だったから肩書代わりに出版を志した旨を述べさせていただきました。
初めての著作は、平成17年11月ごろに日本法令から出版された「65歳定年時代の高齢者賃金最適設計」という本で、この分野を一緒に勉強していた山田理香先生との共著です。
出版が実現したのは、幸運に恵まれた面が大きかったと思います。
共著者で勉強仲間の山田先生が、ある社労士の出版記念パーティーで、日本法令の編集者と同席になり、強烈に営業してくれたことがキッカケでした。
何しろ、それまでは出版社とのパイプなんかまったくありませんでしたから、このことがなければ、出版なんて夢の夢だったと思います。
さて、そもそも出版を志した理由ですが、私の場合は、営業に行き詰っていたからです。平成16年から17年にかけて、思ったように顧客が増えませんでした。
それまでの営業は、ポスティングや自己主催のセミナー等でしたが、いずれも「労多く益少なし」というものでした。
ある日、私がポスティングしたチラシを見たある会社さんから電話が掛かってきました。外出中だったので、固定電話から携帯電話への転送で、開口一番「あんたの事務所、職員さんいないの?」、「はい、私一人でやっている事務所ですから」、「ガチャン」。
どうやら、職員も雇えない弱小事務所を思われたようでした。社労士の場合、一人で経営する事務所というのは多いのですが・・・。
とはいえ、このことがあってから、人が人を信用するためには何が必要か?
そんなことを考えさせられました。
初対面(初めての電話等も含む)では、相手は私を知りません。
自分を知らない相手に自分を信用してもらうためには、やはり何かしらの「肩書」が必要です。
例えば、開業したばかりでも、大手企業の人事部や総務部の経験が10年とか20年とか、そういううたい文句があれば、当然、名刺やチラシ、またはホームページ等に書くことが出来ます。
しかし、私の場合は、未経験から開業しましたから、そういう肩書というか、うたい文句はありませんでした。
それで、出版志向になりました。
「肩書」代わりに本を出そうということです。
幸い、開業前から勉強していた得意分野があります。
まずは、この分野で一点突破だ!
これが、私が出版志向になった経緯です。
決して、経験豊富で実績のある大先生が本を出したわけではないのです。
しかし、やはり出版の営業効果はありましたね。
私の事務所経営が軌道に乗るようになってきたのは、この最初の出版が契機になりました。
本を読んだ会社さんから、直接的に顧問を依頼されたのは1件ですが、紹介等で初めてお会いするお客さんに、まずは名刺代わりに本を差し上げると、その後の交渉がスムーズになるということは何件も体験しました。
やはり、本を「肩書効果」はあったのです。
本を出版するということは、運も必要ですが、チャンスが来た時に、それをつかめるだけの力を蓄えておかなければなりません。
私の場合は、それがあったといえると思います。
本を書く力とは、単に知識が豊富なだけではなく、その知識をもって一定の方向付けができるよう頭が整理されていなければならないと思います。
なおかつ、想定される読者層にわかりやすく説明できる力、構成力等も必要です。
これらの力とは、かなり高い能力であって、イコールではないにしても、社労士としての実務能力も高いということになるのではないかと思います。
ただ、それは、相手が本を読んでくれたらアピールできるという類のことであって、多くの人にそれを望むことはできないと思います。
やはり、出版の効果は「肩書」効果であって、特に私たち社労士が書く本は、さほど売れるわけではないので、印税をあてにするとガッカリすることになります。
私たち、社労士が本を書くことは、第一に「肩書効果」、第二に「社労士業界でのステータスアップ」かなと思います。
売れる本を書きたいな、という希望はまだありますけどね。
2016.11.14