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社会保険適用基準とパート雇用 その4(パートの社会保険適用基準の拡大)

社会保険適用基準とパート雇用 その4(パートの社会保険適用基準の拡大)

パートの社会保険適用基準の拡大

平成28年10月から、一部大企業(従業員数501人以上)でパートタイマーに対する社会保険(健康保険・厚生年金)の適用基準が拡大されます。

【改正後の社会保険適用基準】

  1. 週20時間以上(所定労働時間)
  2. 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 勤務期間1年以上箇
  4. 学生は適用除外
  5. 従業員501人以上(適用企業規模)
    なお、3年以内に検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講じる。

この改正の対象となる従業員数501人以上の会社では、来年10月以降、雇用保険と社会保険の適用基準がほぼ同じになります。
したがって、「雇用保険に加入して、社会保険には加入しない」労働時間設定枠はなくなります。

パートタイマーを社会保険に適用したくないということであれば、週所定労働時間を20時間未満にしなければならず、そうすると雇用保険も適用除外になってしまいます。
なおかつ、会社全体でパートタイマーが受け持つ仕事量が変わらなければ、雇用数を増やさなければならなくなります。

現在、パートタイマーが雇用保険のみに加入していて、かつ所定労働時間数を変えなければ、パートタイマーは社会保険にも適用されますから、パートタイマーが多い会社ほど、社会保険料負担が増えることになります。

そして、数年後はこの基準が中小企業まで拡大されることを想定しておく必要があると思います。

パートの社会保険適用基準拡大の影響

パートの社会保険適用基準の拡大は、会社の労務や社会全体にどのような影響をもたらすでしょうか?

まず、考えられることは、拡大対象となる大企業においては、パートタイマーの区分が二分されるのではないでしょうか。

影響が大きい会社は、パートタイマーを大勢使用している会社です。
例えば、チェーン展開している飲食業やスーパーマーケットが代表例でしょうか。
このような会社では、やはりパートタイマー全員社会保険適用となると、増加する社会保険料負担はばかになりません。

しかしだからといって、相手があることですから、パートタイマー全員の労働時間を減らすわけにもいかないでしょう。
パート自身にとっては、労働時間を減らされても、労働時間そのままで社会保険に適用されても手取り収入は減ることになりますが、どちらが良いと思うかは個人差があるでしょう。

労働時間が減って給与が多少下がっても、手取り収入の割が良い方が良いと思う人もいるでしょうし、どうせ社会保険に加入するならもっと働いて、手取り収入は今以上の額を確保したいと思う人もいるでしょう。

社会保険に加入してしまえば、「130万円の壁」は関係なくなります。
これまで、もう少し働ける時間はあるのに、「130万円の壁」を超えないために、あえて勤務時間を増やさなかった人も相当数いると思います。

そうすると、結局は、パート自身の希望と会社が評価するその人の能力等も考えて、社会保険に加入して今まで以上に働くパートと、勤務時間を短縮して社会保険にも雇用保険にも加入しないパートに分かれるのではないかと思います。

これが上手くマッチングしてほぼ同人数で全体の仕事量を賄えれば良いのですが、おそらくは会社が社会保険料負担増を最小限に抑えたいという思惑が強いでしょうから、パートの雇用数は多少増やすということになるのではないかと思います。

パートタイマー奪い合い時代の到来?

もしかすると、近い将来パートタイマーのなり手が不足気味になって来るかもしれません。

現在、労働力人口は減少していますし、なおかつ近年の育児支援策の充実で、出産・育児のために会社を退職する女性も減少傾向です。
そもそもパートタイマーのなり手は、出産・育児のために会社を退職した女性です。
つまり、労働力人口減少という土台に、さらにパートタイマーのなり手の減少が重なるわけです。

そういう状況で、一部大企業では社保適用拡大対策でパートタイマーを増やすことになれば、適用拡大とは今のところ関係のない中小企業でもパートタイマーを雇うことに苦労するようになるかもしれません。

私は、近い将来、パートタイマーの奪い合いのような状況が訪れるのではないかと想像しているのですが、もしそうなったら、パートのなり手にとって今以上に魅力的な労働条件を検討していかなければならなくなるかもしれません。

しかも、社会保険に加入しても良いと思っているパートと、社会保険に加入したくないと思っているパートにとっての魅力は異なるかもしれません。

パート退職金制度

私が今考えている、パートにとっての魅力的な労働条件とは、退職金制度です。

退職金なら、社会保険に加入しても良いパートにとっても魅力的ですし、「130万円の壁」とは関係ないので、社会保険に加入したくないパートにとってはもっと魅力的です。
さらに、社会保険に加入しないために、雇用保険にも加入できなくなるパート(当面501人以上規模の会社のパート)を考えると、退職金が雇用保険の失業給付の代替にもなるわけです。

適用拡大後のパート雇用管理

 
別視点では、自然にパートタイマーの時給設定枠が広がります。
社会保険に適用されてしまえば、「130万円の壁」は関係なくなりますし、社会保険に適用されないためには週20時間未満に抑えなければなりません。
前回、年収130未満に抑えるためには、週25時間で時給1,050円、週20時間で1,350円が上限という話をしましたが、社会保険適用を避けるためには、週20時間未満に抑えなければなりませんから、少なくとも1,350円まで時給設定範囲が広がることになります。

労務管理上は、パート雇用にメリハリを付ける必要が生じます。
すでに触れたように、パート雇用を、社会保険に加入して、なるべく長く働いてもらうパートと、加入しないで、会社の社会保険料軽減策に寄与してもらうパートに二分するということです。

どうせ社会保険に加入するのなら、会社としてもできるだけ戦力になってほしいと考えて、一般従業員と同じレベルの仕事をさせようとすれば、パート労働法で規定する「一般の従業員と同視すべきパートタイマー」に近づいていきます。
そうすると、厚生労働省が推奨する「短時間正社員」(労働時間だけ短いが、あとは正社員と同じ)という社員の区分も検討してみる価値はあるかと思います。

2015.5.6

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