Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

社会保険適用基準とパート雇用 その3(130万円の壁と労務)

社会保険適用基準とパート雇用 その3(130万円の壁と労務)

130万円の壁補足

社会保険制度上、夫の健康保険の被保険者及び第3号被保険者(この言い方は面倒なので、以後、「社会保険上の被扶養者」といいます)でいられる妻の「年収水準」の上限は130万円未満です。
「年収水準」とカッコでくくったのには意味があります。
この「130万円」とは、年収に換算して130万円になる水準の収入という意味だからです。

年収130万円になる月収は108,334円ですが、仮にある年に月収11万円で3ヵ月しか働かなかったとします。
この年の年収は33万円です。
「130万円の壁」には十分な余裕があります。

しかし、11万円稼いでいた3ヵ月間は社会保険上の被扶養者にはなれません。
この3ヵ月間は年収に換算して130万円になる水準の収入があるため、社会保険上の被扶養者からは外れることになります。
「年収水準」とはそういう意味です。

雇用保険の適用基準

ここで、雇用保険の適用基準について触れておきましょう。
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、1ヵ月以上雇用見込があれば適用です。

社会保険の適用基準は、一般従業員の4分の3ですから、一般従業員が週40時間なら30時間未満、一般従業員が週35時間(1日7時間勤務)であれば、26時間15分未満ですが、余裕を取って、だいたい週24〜5時間で設定している会社が多いと思います。
この労働時間設定は、社会保険は適用除外ですが、雇用保険には適用されます。
雇用保険の保険料は社会保険よりも一ケタ安く、本人も会社もさほど大きな負担ではないですから、給付面を考慮すると望ましいと思います。

パートタイマーの時給設定

では、社会保険には適用されず、雇用保険には適用されるパートタイマーの時給設定をどうするかという点で、「103万円の壁」と「130万円の壁」を考えてみましょう。

少なくとも、会社で社会保険に適用されないメリットを享受するためには、社会保険上夫の被扶養者でなければなりませんから、「130万円の壁」は意識せざるを得ません。

週所定労働時間が25時間のパートタイマーを例にとれば、月約100時間働くことになるので、時給が900円で、月9万円、年108万円ですから、すでに「103万円の壁」は超えてしまいます。
「130万円の壁」を超えないためには、時給1,050円で、月10.5万円、年126万円になり、時給設定としてはこの程度が上限になります。

一方、最低賃金を考えると、東京では現在888円です。
900円という時給設定は東京では最低賃金ぎりぎりというところです。
「103万円の壁」は、実質的には「意識の壁」にすぎず、しかも来年以降消滅する予定ですから、「130万円の壁」だけを意識するにしても、時給900円から1,050円程度の間で、パートのモチベーション対策も含めた賃金制度を作らなければなりません。
かなり設定枠が窮屈です。

では、勤務時間をもう少し短縮したらどうなるでしょうか。
雇用保険には加入して、社会保険には加入しない勤務時間の最短は、週20時間です。
週20時間なら、月約80時間ですから、逆算すると時給1,350円まで設定可能となります。
設定枠の窮屈さはかなり解消されますね。

雇用保険に加入しないのなら、もっと設定枠は拡大しますが、そうなるとパートさんの人数を増やさなければならなくなります。

パート労働法の考え方

以上の「130万円の壁」を意識した時給設定は、実は賃金本来の考え方ではありません。
賃金とは労働に対する対価ですから、本来は労働価値という観点から時給を決めなければならないのです。
少なくとも建前上は。

近年、パート労働法が2回も改正され、パート雇用のあり方が規制強化されています。
まず、職務内容と人事のしくみが一般従業員と同じで、単に勤務時間が短いだけというパートタイマー(「一般従業員と同視されるパートタイマー」といいます)は、賃金のすべての項目(基本給、各種手当、賞与、退職金等)で、一般社員との差別的待遇が禁止されます。
このカテゴリーに当てはまらないパートに対しても、賃金等の殊遇についての説明義務が課せられています。
つまり、賃金は賃金本来の考え方で説明しなければなりません。

そうすると、会社は、賃金の本来的な考え方で決めた時給が、結果的に「130万円の壁」の範囲内で収まるように設定するということをしていかなければならなくなります。

なかなか難しい時代になりました。
産休や育介休は、労働法と社会保険が連携していましたが、この分野では労働法と社会保険が矛盾というか対立する側面もあり、会社の労務も両者の整合性を付けるために苦労しなければならないのだと思います。

2015.5.6

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional