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社会保険適用基準とパート雇用 その2(103万円の壁、130万円の壁)

社会保険適用基準とパート雇用 その2(103万円の壁、130万円の壁)

パート主婦が意識する収入の「2つの壁」

パート主婦の意識する収入水準の「壁」が2つあります。
ひとつは「103万円の壁」、もうひとつは「130万円の壁」です。

「103万円の壁」は、税制において有利な扱いを受けるための上限年収です。
一方、「130万円の壁」とは、社会保険制度上、夫の被扶養者(第3号被保険者)になれる上限の年収水準です。

「103万円の壁」は意識の壁

主婦が、自身の年収を103万円以下に抑えた場合、自身に対して所得税が課税されず、なおかつ夫は「配偶者控除」が受けられます。
「配偶者控除」は38万円ですから、夫の課税所得が38万円低くなることになり、38万円×税率分だけ所得税額が低くなります。

所得税率は、最終的な課税所得によって税率が違いますが、一般的なサラリーマンなら5%〜10%の人が多いと思います。
そうすると「配偶者控除」を受けることによって、夫の手取り所得が年1.9万円から3.8万円程度多くなります。
比較的高所得者であれば、税率が20%以上になる人もいるかもしれません。
そういう人は「配偶者控除」の恩恵も大きくなります。

「103万円」という数字は、「給与所得控除」が65万円で、それに本人の「基礎控除」38万円を足して「103万円」ということで、要するに課税所得が0円になる年収の上限ということです。
なお、住民税では基礎控除が5万円低い33万円ですから、本人に住民税がかからないための年収の上限額は98万円ということになります。

では、主婦の年収が103万円を超えるとどうなるか?
まず、本人に所得税がかかります。
例えば、年収が104万円になると、104万円-103万円ですから、1万円の課税所得が発生し、その5%(課税所得が195万円までは所得税の税率は5%)、つまり500円の所得税がかかります。

なお、住民税は、課税所得に関わらず10%で、基礎控除が5万円低いので同年収では、6,000円の住民税額になります。
住民税は年収103万円でも、すでに5万円×10%で5,000円の負担になるので、年収103万円から104万円に1万円上がったことによる追加負担は、1,000円です。
つまり、去年年収が103万円だった主婦が、今年1万円増えて、104万円になったとしても自身の税負担額は所得税と住民税あわせて、年額1,500円の負担増にすぎません。

一方、「配偶者控除」はどうなるかというと、年収が103万円を超えるとなくなることはなくなるのですが、代わりに「配偶者特別控除」という控除が受けられます。
「配偶者特別控除」には所得制限があって(配偶者控除にはありません)、夫の年合計所得が1,000万円以上あると受けられません。
ただ、合計所得が1,000万円ということは、年収(給与取得だけと仮定)が1,230万円程度ということですから、一般のサラリーマンではごく少数派でしょう。

「配偶者特別控除」は、配偶者(本稿の流れでは主婦=妻)の年収が103万円を超えた場合次のようになります。

配偶者の年収配偶者特別控除の額
103万円以上105万円未満38万円
105万円以上110万円未満36万円
110万円以上115万円未満31万円
115万円以上120万円未満26万円
120万円以上125万円未満21万円
125万円以上130万円未満16万円
130万円以上135万円未満9万円
135万円以上140万円未満6万円
140万円以上141万円未満3万円
141万円以上0円

特別配偶者控除は、上表のように配偶者の年収の上昇に伴って段階的に引き下げられます。

つまり、主婦が年収130万円以上稼いでも、急に負担が増えるのではなく、本人も夫も段階的に妻の年収の増加に従って、少しずつ増えることになります。
「配偶者特別控除」は、年収105万円からは妻の年収が5万円増えるごとに、5万円減っていくわけですから、夫の所得税率が5%なら2,500円、住民税とあわせても15%ですから7,500円、夫の所得税率が10%なら、所得税だけで5,000円、住民税とあわせて10,000円ずつ増えていくことになります。

夫の所得税率が10%の夫婦で、妻が去年は105万円稼いでいたのが、今年は110万円稼いだというケースで考えてみましょう。
この場合、夫の負担増が1万円、妻自身の負担増は5万円×15%で7,500円です。
つまり、妻の年収が5万円増えたことによる、夫婦合計の負担増は17,500円ということになります。
夫が比較的高所得者で、所得税率20%(給与年収で700万円程度以上)の場合は、夫婦で22,500円程度の負担増になりますから、増えた収入の半分近くは税負担が増えることになりますが、それでも、可処分所得は増えます。

「103万円」の壁は、それを超えると確かに夫婦合計の税負担は増えますが、負担は段階的に増えるのであって、いっぺんに10万円も20万円も増えるわけではなく、負担増が収入増を上回ることもありません。
したがって、「壁」というより「階段」の入り口と捉えた方が実態に即しています。
私の私見では、さほど気にする必要はないと思うのですが、実際には「103万円の壁」を強く意識するパート主婦が多いようです。
その意味では、「意識の壁」だと思います。

「103万円の壁」は消滅の予定

ちなみに、現政権は女性の活躍する社会にしようということで、この「配偶者控除」、「配偶者特別控除」を廃止し、代わりに「夫婦控除」というものを導入する予定です。
「夫婦控除」については、私も新聞報道で読んだ程度で正確にはわかりませんが、主婦が「103万円の壁」を意識することが女性の働き方を制限しているという批判に対応するものですから、少なくとも「103万円の壁」は消滅することになるはずです。
本当は、今年からそうなるはずだったのですが、来年以降に先延ばしになったようです。

「103万円の壁」は、実質的には大した「壁」ではないので、パート主婦世帯にとっては多少の負担増になるかもしれませんが、これがなくなることはさほど大きなことではないと考えます。
これに対して、「130万円の壁」は、まさに「壁」というべきで、主婦の働き方に大きな影響力があります。

「130万円の壁」はまさに「壁」

「130万円の壁」とは、社会保険制度上の壁です。
パート主婦が、夫の健康保険の被保険者及び第3号被保険者(この言い方は面倒なので、以後、「社会保険上の被扶養者」といいます)でいられる妻の年収水準の上限が130万円未満なのです。
つまり、パート主婦の収入が年130万円以上の水準になると、社会保険上夫の被扶養者扱いされなくなり、自分自身が社会保険に加入しなければならなくなります。
その社会保険とは、会社で社会保険の適用除外になっているとすれば、年金は国民年金の「第1号被保険者」として保険料を納めなければなりませんし、健康保険は、市区町村の運営する「国民健康保険」に加入しなければなりません。

国民年金の保険料は、平成27年度で月15,590円です、年187,080円になります。
さらに、国民年金保険料は平成29年度まで少しずつ引き上げられる予定で、その後の物価や賃金が上昇すれば保険料も引き上げられます。

国民健康保険の保険料は、自治体で異なるので、正確には言えませんが、どの自治体でも最低限、「均等割」と呼ばれる定額負担と、「所得割」と呼ばれる所得比例負担があります。自治体によっては、これに「世帯割」と「資産割」という負担が組み合わされます。

所得比例の保険料部分は、130万円を少しばかり超過した程度なら大した額にはならず、定額負担部分も、低所得者には割引する自治体もあり、やはり大した額にはならないと思いますが、それでも、国民年金の保険料とあわせて、年収が130万円に達したとたんに年20万円程度以上の負担が発生してしまいます。

極端なケースを想定すると、今まで、年収129万円に抑えていた主婦が、1万円余計に稼いだため、20万円の負担が増えるという「逆ザヤ」現象が起こり得ます。
そういう意味では、「130万円の壁」は文字通り「壁」として意識した方が良いでしょう。

2015.5.6

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