Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

社会保険給付と労務 その8(労災退職者の社会保険)

社会保険給付と労務 その8(労災退職者の社会保険)

業務上災害により、職場復帰が不可能なほどの事態になった社員を話し合いで合意退職してもらう。
こんなことが可能なのか?という疑問を投げたところで前回は終了しました。
今回は続きです。

業務上災害による休業では、健康保険から給付が出るわけではなく、労災保険から出ます。
しかし、それでも休業中社会保険料負担が生じます。
この負担は会社にとっても重荷ですが、それは労働者も同様です。
したがって、対象労働者自身の身になって、社会保険料負担について考えてみることが、合意退職のポイントになるのではないかと思います。

退職後の健康保険

会社を退職すると、健康保険は国民健康保険に加入することになります。
もちろん、労災保険給付は、退職に影響されませんから、支給事由が存する限り支給は継続されます。
さらに、労災保険給付は非課税なので「所得」にはなりません。
したがって、休業した年度の翌年度か翌々年度には、退職して国民健康保険に加入した方が保険料負担が低くなる可能性が高まります。

国民健康保険の保険料は概ね定額負担部分と所得比例負担部分で構成されています。後者は「所得割」といって、ある年度(4月〜翌年3月)の保険料は、前年(1月〜12月)の所得によって算出されます。
休業した年の所得は低くなるわけですから、その翌年度の国民健康保険の保険料の「所得割」部分が安くなるわけです。
休業した月によって、その年の所得の低くなる程度が異なります(年後半以降の休業では年間所得がさほど低くならない)から、国民健康保険の保険料が現在の健康保険の保険料より低くなる年度は、翌年度か翌々年度かということになります。

退職後の年金

会社を退職すると加入すべき年金制度は、国民年金になります。
したがって、今まで負担していた厚生年金の保険料が国民年金の保険料にとって代わるわけで、負担が全くなくなるわけではありません。
しかし、傷病退職の場合、やはり前年所得が低くなっているので、国民年金の保険料免除制度(申請免除)を利用できる可能性が高くなります。
障害年金受給権があれば、法定免除に該当します。

国民年金の保険料免除制度を受けると、将来受給できる老齢基礎年金の年金額は低くなります。
厚生年金の保険料は納めなくなるので、当然、将来受給できる老齢厚生年金の年金額も会社在職期間で決まってしまいますから、退職以降は年金額を増やすことはできなくなります。

しかし、もし、2級以上の障害年金を受給しているのであれば、障害の程度が軽くならない限り、このままずっと障害基礎年金と障害厚生年金の2階建て年金を受給し続けることができます。
障害年金受給者が、老齢年金を受給できる年齢になっても、二重に年金を受給することはできません。
そう考えると、障害年金受給者が、会社に在籍し続けて厚生年金の保険料を負担する意味は低くなります。

社会保険知識が重要

業務上災害の場合、道義上退職勧奨は好ましくありませんから、次の点に留意してください。

  1. 本人の職場復帰可能性がないこと
  2. 他のことで誠意を尽くすこと
  3. 退職については、あくまでも本人の社会保険料負担軽減という観点で提案すること

以上のように、業務上傷病休業者の退職の場合も、社会保険知識が重要と思います。

2015.4.26

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional