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社会保険給付と労務 その7(解雇制限)

社会保険給付と労務 その7(解雇制限)

前回少し触れたように、業務上災害による休業者には労働基準法の「解雇制限」が適用されるため、私傷病のように休職期間を設けることができません。
今回は解雇制限について詳しく説明しましょう。

解雇制限

労働基準法第19条(解雇制限)

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定(産前産後休業)によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が第81条の打切補償を支払う場合(※)又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りではない。
※傷病補償年金が支払われるときは「打切補償」を支払ったものとみなされる。

打切補償

労働基準法第81条:第75条(療養補償)の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1,200日分の打切り補償を行い、その後は法律の規定による補償は行わなくてもよい。

傷病補償年金(労災保険)

業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、その傷病の療養開始後1年6ヵ月を経過した日又はその日後において、①その傷病が治っていない、②障害の程度が傷病等級表の傷病等級(上位3等級)に該当すること、のいずれにも該当する場合に支給される。

ある法律のひとつの条文は、他の条文との関係もあるので、関係条文も理解しないと解読できません。
「解雇制限」を理解するためには、次のような構成で捉える必要があります。

  1. まず、前提として労働基準法により使用者には業務上被災した労働者への「療養補償」が義務付けられている。
  2. 療養が長期化した場合、療養後3年を経過後、平均賃金の1200日分を支払うことで「療養補償義務」が免じられる(打切補償)。
  3. 業務上傷病の療養期間とその後1ヵ月は解雇できないが、3年以上経過し「打切り補償」を行った場合は解雇できる(解雇制限)。
  4. 労災保険は労基法上の使用者の災害補償義務の代行制度であり、「傷病補償年金」は「打切り補償」の代わりにもなっている。

簡単にいうと、業務上災害による休業者は、①休業期間と職場復帰後30日間は解雇できない、②長期休業者は最低3年が経過し、「打切補償」をしないと解雇できないということになります。

これはあくまでも労働基準法上の解雇制限の話で、職場復帰後30日経てば解雇できるかといえば、今度は労働契約法上の「解雇権濫用法理」があって、相当な理由がなければ解雇はできません。
ただ、職場復帰して業務をこなせるようになれば会社としても解雇しなければならない理由はなくなるでしょう。

「打切補償」は、対象者が労災保険の「傷病補償年金」を受けていれば必要なくなりますが、「傷病補償年金」は、障害等級上位3等級に該当する必要があります。

もし、「傷病補償年金」を受給できない休業者を解雇しようとすれば、平均賃金の1200日分ですから、平均月給が30万円程度の従業員であれば、1200万円の「打切補償」を支払わなければならなくなります。平均月給が45万円程度であれば、1800万円ということになります。
中小企業にとっては大変な負担だと思います。
つまり、「傷病補償年金」が支給されなければ解雇はほとんど不可能ということになります。

労災による長期休業

特に、会社にとって問題となるのは長期休業の場合です。
休業期間の社会保険料負担が会社にのしかかってくるからです。
長期休業者が高給であれば、その分社会保険料負担が高くなるだけでなく、「打切補償」のコストも高くなりますから、「傷病補償年金」が受給できない限り、解雇も実質不可能です。
また、「傷病補償年金」が受給できても最低3年間は解雇できません。

このように、業務上災害で重篤な傷病者を出してしまうことは会社にとって大変な負担になります。
したがって、会社の労務管理で最も重要なことは、まず、業務上災害を防止することでしょう。

しかし、万一、業務上災害による長期休業者が出てしまった場合、そして、その社員が職場復帰不可能な状態であれば、話し合いによる合意退職を目指すことになるでしょう。
合意退職であれば、解雇ではないのですから「解雇制限」には触れません。

しかし、それは可能なのでしょうか?

2015.4.25

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