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社会保険給付と労務 その3(私傷病休職の期間)

社会保険給付と労務 その3(私傷病休職の期間)

休業、休職の期間

休業、休職の期間ですが、私傷病と通勤災害による休業以外は、法令により期間が決まられているか、会社が任意に決められなくなっています。
業務上災害による休業と産前・産後休業は労働基準法の「解雇制限」がかかり、産前・産後休業に関しては、その休業の期間も労働基準法により決められています。

育児・介護休業の場合は、法令によりやはり休業期間が決められていて、法令基準より長い休業を取らせることは可能ですが、法令を超える期間については社会保険給付が出ません。

こう考えると、会社が任意で決められる休業・休職は「私傷病休職」しかありません。通勤災害による休業については、社会保険給付は労災保険から出ますが、労働基準法上の「解雇制限」はかかりませんから、これも私傷病に準じた扱いが可能です。

私傷病休職の期間と社会保険

では、私傷病休職の期間はどのように決めたらよいでしょうか。
社会保険制度上のポイントが2つあると思います。

① 社会保険料負担

  • 産休と育休以外の休業期間は、社会保険料負担がかかります。
    • 労働保険(労災保険、雇用保険、うち労災保険は社員負担なし)は実賃金に対してかかるので、社員の休業中に賃金を払わなければ保険料負担はなくなります。
    • しかし、社会保険料は「標準報酬月額」に対してかかり、休業時してしまうと、休業前の「標準報酬月額」が継続されることになります。そのため、賃金を払わなくても保険料負担が生じます。

②退職後の給付

  • 傷病手当金には、一定要件を満たせば、労働者が退職した後も一定期間支給される「資格喪失後の給付」があります。
    • 資格喪失後の傷病手当金の要件は、資格喪失前の継続被保険者期間が1年以上であること
    • 支給期間は、最大で支給開始から1年6ヵ月
  • 労災保険給付は労働者の退職に影響されません。つまり、退職後も支給事由が存する限り給付は継続します。

ポイント①は休職中に賃金を払わなくても、社会保険料分は会社の負担があること、ポイント②は退職後も社会保険給付は続くということです。
要するに、休職の期間を長くすることは、会社の社会保険料負担が大きくなり、休職期間を短くしても、退職後も一定の補償は続くということを意味します。

会社の体力に見合った休職期間を

以上のことを踏まえて休職期間について考えてみましょう。

社会保険料の会社負担を考えると、従業員数が少ない会社で給料の高い社員の休職が長期化した場合、かなりの負担になってきます。
したがって、会社の規模やその体力(財務状況)を考えて、無理のない期間を設定すべきと思います。
かといって、短すぎても社員が不安を感じます。

私は、中小企業から就業規則の作成や改定を依頼された場合、概ね6ヵ月程度を目安として、事業主の意見を聞きながら決めるようにしています。

ただし、就業規則の改定の場合、従前の就業規則があるわけですから、従前の規定よりも短くすることは、いわゆる「不利益変更」となりますから、慎重に判断する必要があります。

私自身の実務経験では、従業員数13人程度で、大企業の就業規則をそのまま流用し、私傷病休職の期間が1年6ヵ月という会社で、休職者の社会保険料負担に耐え切れず、休職期間の途中で退職させたという事例に遭遇したことがあります。

依頼を受けた業務自体は、退職が決定した後の手続の業務だったのですが、長期間の休職期間を設定しても会社がその負担に耐えられなければ結局は意味がないという印象を持ちました。

この会社では運よく「退職」に関してはトラブルになりませんでしたが、休職期間の途中で解雇か退職勧奨をすれば労使間のトラブルになる可能性も十分に考えられるのです。

2015.3.16

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