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社会保険と労務(通常業務)

社会保険と労務(通常業務)

社会保険も、会社の労務管理と密接に、しかも広範囲で影響します。

例えば、社員を採用したときには、社会保険や雇用保険の資格取得手続が必要で、退職時には、資格喪失手続が必要になります。
そして、毎年の社会保険の算定基礎業務(社員の標準報酬月額を決める業務)、労働保険の年度更新業務(前年度労働保険料の確定、今年度の概算払い)があります。

社会保険とは、健康保険(40歳以上は介護保険も含む)と厚生年金保険のことですが、広い意味では、雇用保険と労災保険も含みます。
狭い意味では、雇用保険と労災保険は「労働保険」とひとくくりにされ、社会保険とは分けられます。適用の範囲は、労働保険の方が幅広く、保険料の徴収方法も異なります。

標準報酬月額の決定・改定

社会保険(狭義)では、労働者の賃金は「標準報酬月額」と呼ばれる仮の賃金額に置き換えられます。

社会保険料の額は高いので、労働保険のように1年分を一度(労働保険は最大3分割で支払う)に徴収するのではなく、毎月徴収するのですが、残業等で毎月変わり得る賃金をそのまま保険料の基準にすると事務が煩雑になってしまいます。

また、厚生年金では、将来の年金額算定のために毎月の賃金額を記録しますが、これも毎月の賃金額がいちいち変動しては記録作業が大変になるという事情もあります。

さらに、社会保険給付のうちの所得補償的な給付(傷病手当金や出産手当金:休業中の所得補償として支給されます)は、標準報酬月額が給付額の基準になります。

したがって、保険料の計算の基礎となり、年金記録にもなり、かつ給付の基礎にもなる「賃金」は、切の良い額で、しかも1度決めたらあまり頻繁に変えないで済む必要があります。

そのために考案された仮の賃金額が「標準報酬月額」です。
つまり「標準報酬月額」とは、切りの良い額で、一度決めたら原則1年間変えることがない「社会保険制度上の仮の賃金額」ということです。

「標準報酬月額」の決定および改定方法は次の3つです。

定時決定

4月から6月の3ヵ月間の実際の賃金を標準報酬月額表に当てはめて、9月から翌年8月までの1年間の「標準報酬月額」を決定します。
この、1年間の標準報酬月額の決定を定時決定といい、その手続の際に、算定基礎届という届出書を提出することから、算定基礎業務とも呼ばれています。

随時改定

一度決定した「標準報酬月額」でも、次の決定までに昇給や降給により、実賃金と「標準報酬月額」が大きくかい離していまうことがあり得ます。
そうした場合に、実賃金と「標準報酬月額」のかい離を放置しておくわけにはいきません。
そのため、固定的賃金の変動により、変動後の3ヵ月間の賃金平均額が「標準報酬月額」で2等級以上変わる場合には、1年間の途中でも臨時的に改定します。
これを「随時改定」といい、「月額変更届」という届出をするため、実務的には「月変」と呼ばれることもあります。

資格取得時決定

社員が入社したときには、予定の賃金を標準報酬月額表に当てはめて「標準報酬月額」を決定しますが、これを「資格取得時決定」といいます。

他の2つの「標準報酬月額」決定または改定には、3ヵ月間の実賃金の平均額が基準になりますが、この「資格取得時決定」だけは、3ヵ月平均ではなく、予定の賃金が基準になります。
入社したばかりでは、平均すべき3ヵ月間がないので当然なのですが、このことは60歳以降の「同日得喪」という特例的な改定方法に応用されます。

労働保険の場合

労働保険の保険料支払い方法は先払いで、1年後にその年度の賃金が確定したときに過不足の清算をし、同時に次の1年分を概算で先払いするという作業を繰り返すことになります。
この業務を労働保険の「年度更新」といいます。

労働保険の場合は、「標準報酬月額」というものはありません。労働保険の保険料の基礎は、適用者対象者の賃金総額で、この賃金総額を計算する機会は原則年1回の「年度更新」時だけです。
しかも、賃金総額を計算するのは役所ではなく、会社ですから、役所には事務の煩雑さを回避するというインセンティブがありません。

したがって、「年度更新業務」で一番大変なことは、社員の1年間の賃金集計ということになります。
ただし、会社が使っている賃金計算ソフトが、年度更新対応であれば、ソフトが自動的に計算をしてくれますから、さほどの手間ではなくなります。

また給付の場合は、給付の必要が生じた時点で、雇用保険は対象者の前6ヵ月分の賃金、労災保険の場合は前3ヵ月分の実賃金を基に給付の基準となる賃金日額が算定されます。
これも算定の基礎となる賃金額は、会社が支給申請書に記載しますから、やはり役所の事務的な煩雑さはありません。

その他の社会保険業務

社会保険は原則家族単位の適用になっており、被扶養者の異動があれば、その都度届出(被扶養者異動届)が必要となります。
また、被保険者(つまり社員)が結婚して苗字が変われば、氏名変更届、引っ越しすれば「住所変更届」等があります。
賞与支給時には賞与支払届の提出もあります。

概ね以上が社会保険業務のルーティン的な業務ですが、自社で行うか、社会保険労務士に業務委託するかは別として、どの会社でも普段から行っている業務です。

社会保険業務が大変なわけ

このように社会保険業務は結構大変なわけですが、さらに社員に何らかの異変(病気休業、産休、育休、介護休業等)があれば、社会保険給付(雇用保険、労災保険含む)があり、その支給申請は会社を通じて行うことになります。

会社員以外の人たちの社会保険は、当事者と国や自治体との直接的なやり取りになりますが、会社員の場合は、ほとんどすべてを会社を通じてやり取りすることになります。

それで、「社会保険労務士の業務」のページでは、このような形態を「間接統治」に例えてみました。

社会保険は概ね国の制度なのですが、国(労災なら労働基準監督署、年金なら年金機構)と当事者が直接やり取りをするのではなく、会社が間に入って様々な管理業務や手続業務を行います。

社会保険の当事者(被保険者)である社員を最も身近に管理しているのは会社ですから当然といえば当然のようにも思えます。

しかし、会社が経営体として社員を管理する分野は、本来は、昇給、昇格、人事異動等に絞られるはずですが、それらに加えて、多くの社会保険の適用や給付の業務が発生し、管理業務が増えてしまいます。
また、社会保険のルールは会社が決めるのではなく、国が法令で決めていますから、総務部の社員はそうした社会保険のルールも学ばなければならなくなるわけです。

ここで、ちょっと宣伝になりますが、このような社会保険の会社を通じた「関節統治」方式ゆえに社会保険労務士のような社会保険制度の専門家が、会社のお手伝いをするニーズが出てくるのだと思います。
自営業者が、社会保険労務士に業務を委託するという話は聞きませんから。

2014.12

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