Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

年金額 その8(マクロ経済スライド)

年金額 その8(マクロ経済スライド)

マクロ経済スライド

「100年安心」を謳った平成16年の年金改正では、「100年安心」させるため、年金支給水準を長期間で少しずつ下げていく「マクロ経済スライド」が導入されました。
「マクロ経済スライド」とは、前回説明した「名目手取り賃金変動率」に、さらに「スライド調整率」という率を掛けて、年金額の上昇率の抑えるというしくみです。
実質的には、「割引スライド」と言った方がわかりやすいでしょう。

「名目手取り賃金変動率」というと難しく、かつ分かりにくくなるので、本来の年金額改定率を物価上昇率(実際には違うことは前回説明しました。あくまでもわかりやすい説明のための仮定です)に単純化して説明します。

例えば、物価上昇率が1.5%だとしたら、その率から「スライド調整率」を差し引いて、改定率を決定します。「スライド調整率」を0.9%とすれば、改定率は0.6%です。
物価は1.5%上がったのに、年金は0.6%しか上がらないということで、年金の実質的な支給水準は0.9%下がったことになりますね。
ただ、それでも年金額自体は0.6%上がっています。
このように、物価変動率を差し引いた水準を「実質額」、単なる金額を「名目額」といいます。

「マクロ経済スライド制」は、名目額は下げずに実質額を下げるという建前で導入された制度ですから、物価下落局面では実施されません。
物価下落局面では、物価スライド(繰り返しますが単純な物価スライドではありません)で年金額は下がりますが、実質額は維持されます。つまりマクロ経済スライドは発動されません。マクロ経済スライドはデフレ下では発動されないことになっているのです。

物価は少し上昇したけど、その上昇率が「スライド調整率」よりも低い場合は、年金額は据え置かれます。
例えば、物価上昇率が0.5%で「スライド調整率」が0.9%であれば、年金額が据え置かれることで、実質額は0.5%だけ下がることになります。つまり、この場合には、マクロ経済スライドは中途半端に発動されることになります。

マクロ経済スライド

さて、気になる「スライド調整率」ですが、この指標は前々年度以前3年度の公的年金被保険者数の変動率×平均寿命伸び率で算出され、平成16年改正当時は、0.9%程度になるといわれていました。
最近の新聞報道では、1%前後になる見込みという記事が目についていましたが、平成27年度では0.9%に決まりました。

初めてのマクロ経済スライド

平成27年度は、初めて「マクロ経済スライド」が発動される年度になります。
今までなぜ発動されなかったかというと、まず、デフレだったということです。
ただ、平成18年度と20年度には多少物価は上がっています。それでも当時は「特例水準」が解消されていませんでしたから、やはり発動できませんでした。

平成27年度は、「特例水準」が解消され、かつ前年に物価、賃金が上昇したため、平成17年度の制度導入以来、初めて「マクロ経済スライド」が発動できる条件が整ったということです。
平成26年は、消費税の引上げと円安の影響で、物価は2.7%上がりました。しかし、賃金上昇率は物価上昇率には届かず、実質賃金は下落、「名目手取り賃金変動率」は2.3%の上昇です。
「特例水準」の解消と「スライド調整率」がなければ、平成27年度の年金額は2.3%引き上げられるところですが、「特例水準」の解消分が0.5%、「スライド調整率」が0.9%なので、差引0.9%の改定率です。
物価が2.7%上昇したのに、年金は0.9%しか上がらないということになりました。

デフレ下でのマクロ経済スライドはどうなる?

平成17年度に導入された年金制度維持のためのしくみである「マクロ経済スライド」が、平成27年度になって、ようやく初めて発動されるということは、その間に年金財政が悪化したということでもあります。
今後、このような事態を避けるべく、総理大臣の諮問機関である「社会保障制度改革国民会議」は、昨年安倍総理大臣に「デフレ下でもマクロ経済スライドを発動すべき」という提言をしています。

デフレ下でも「マクロ経済スライド」が発動されるようになれば、物価の上昇局面でも下落局面でも発動されることになりますから、毎年度確実に年金の実質額は1%前後下がっていくことになります。
デフレ下で発動されれば、名目額は物価下落率より大きく引き下げられ、インフレ化で発動されれば、名目額は上がりますが、実質額は下がります。
どちらに転んでも実質額は下がることになるのです。

最近の報道では、政府は「デフレ下でのマクロ経済スライド」の導入をしない方針のようです。
なんでも選挙があるからとか。
デフレ下でマクロ経済スライドが発動されれば、年金額は物価下落による引下げに、マクロ経済スライドによる調整率の分がさらに加えられることになり、高齢者の反発を買うからでしょう。
しかし、これは一種の先送りであって、将来的には「デフレ下でのマクロ経済スライド」を導入せざるを得なくなるのではないでしょうか。

2015.3.5

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional