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年金額 その7(平成16年改正と特例水準)

年金額 その7(平成16年改正と特例水準)

平成16年改正

平成16年改正は、「100年安心」を謳った大きな年金改正で、保険料(率)は平成29年度までは引き上げるものの、そこで固定し、年金の実質的な支給水準を長期間かけて少しずつ下げていく「マクロ経済スライド制」が導入されました。
こうして、年金財政の健全化を図り、「100年安心」を実現しようとする改正でした。「100年安心」については眉唾で、現時点では、とても100年も安心してはいられないという状況なのですが、それは置いておいておきましょう。

「マクロ経済スライド制」については、次回説明するとして、今回は「特例水準」の話を絡めながら、老齢厚生年金の計算式のさらなる複雑化について触れていきます。

何はともあれ、平成16年改正では「スライド制」のしくみが大きく変わりました。
それまでのスライド制は、関連性を持ちながらも物価スライドと賃金スライドに分かれ、5年に一度の「財政再計算」に基づいて、年金法定額の改定や再評価率表の書き換えをしてきたわけですが、平成16年改正の実施年度になる平成17年度以降は、年金額改定も再評価率表の書き換えも毎年度行われることになりました。
この改定率は「名目手取り賃金変動率」と名付けられた指標によって決められます。

「名目手取り賃金変動率」による改定率は、基礎年金等の定額の年金の改定率にも、再評価率の改定にも用いられます。
すでに年金を受給している人で68歳以上の人の改定率だけは物価変動率によりますが、物価変動率の方が「名目手取り賃金変動率」よりも高くなってしまう場合には、「名目手取り賃金変動率」によるようです。

「名目手取り賃金変動率」とは、法律には「前年の物価変動率に、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率と可処分所得割合変化率を乗じたもの」と規定されていますが、なんのことかわかりませんね。
このあたり勉強不足で自信がないのですが、いろいろ調べた結果概ね次のようになるようです。

平成16年改正の新たな年金額改定のしくみは、本来は、賃金上昇率が物価上昇率を上回るという想定で作られたしくみなのようなのですが、もしも、物価上昇率が賃金上昇率を上回った場合は、年金額の改定率は物価上昇率より低くなり、また、賃金下落率が物価下落率を上回る場合には、改定率は物価下落率よりも大きくなるようなのです。

つまり、新しいスライド制では、物価や賃金の変動率の悪い指標に引きずられて決まると捉えておけば、大きな間違いはないと思います。

特例水準

平成16年の改正は平成17年度から実施されることになるのですが、当時この新しい改定率を実際に適用する上で障害がありました。

平成12年度からの3年間、物価が下落し、本来なら年金額を引下げなければならなかったのに、実際には年金額は据え置かれました。したがって、平成12年度以降の年金額は、本来の年金制度のしくみによって算出された年金額よりも高くなっています。
引下げなければならなかった年金額を下げなかったのですから。
平成17年度当時はマイナスの物価スライドを3年分凍結していた「つけ」が残っていたということです。

そうなると、何らかの形でこの「つけ」を解消しないことには、新しい改正によって算出された年金額は、前年度受給していた年金額よりも低くなってしまいます。それもかなり。
それで、平成17年度以降は、年金額をいきなり改正水準(こちらは「本来水準」と名付けられました)にはしないで、しばらくは、物価スライドの「つけ」が残った年金水準を維持することとなりました。

これを「特例水準」と名付け、今後物価や賃金が上昇しても、「特例水準」の年金額は平成17年時点の水準に据え置き、「本来水準」が「特例水準」を超えることで自然消滅するのを待つ形となりました。

特例水準の経緯

「本来水準」が「特例水準」を超えるためには、物価や賃金がかなり上がらなければならないわけですが時代はデフレです。
物価や賃金の水準は、その後一時的に上がることはありましたが、その後また下がるというあんばいで、「特例水準」は解消するどころかかえって拡大していまいました。

「特例水準」は、平成17年度当初は1.7%でした。それが平成23年度時点では、2.5%に拡大しています。
なぜそうなるのかというと、「特例水準」はあくまでも平成16年改正前の古いスライド制に立脚していますから、その後の物価や賃金の変動に対いても、本来水準の改定率と「特例水準」の改定率は同じではありません。

すでに自信なげに説明しましたが、平成16年改正の新しいスライド制は、物価上昇率が賃金上昇率を上回わったり、賃金下落率が物価下落率を上回る場合、悪い方の指標に引きずられます。
つまり、このような局面では、従来型の単純な物価スライドの方が、年金額は多少なりとも高くなるわけです。

「特例水準」とは、改正前の旧物価スライド方式を受け継いでいますから、物価スライド率は単純に物価変動率で決まります。
したがって、このような局面では、「特例水準」と「本来水準」の差は拡大してしまうのです。
ただし、「特例水準」は、基準年度となる平成17年度の水準は超えられませんから、多少は「特例水準」と「本来水準」の差が縮小したことはありました。
それで、平成17年度に1.7%だった「特例水準」は、平成21年度に0.8%まで縮小したものの、その後リーマンショック等の影響で不景気になり、物価も賃金も下がり、かつ賃金下落率の方が高いという状況が続き、結果的には平成24年度時点で2.5%まで拡大してしまったのです。

従前額と特例水準

老齢厚生年金の計算式においては、「特例水準」は最新年度の物価スライド率に反映されます。
老齢厚生年金の計算式の最後につく物価スライド率は、特例水準分高くなっていますから。

したがって、これまで説明してきた老齢厚生年金の「従前額」の計算式は、現在のところ「従前額」=「特例水準」でもあります。
そのため、平成17年度以降は、「平成6年再評価率」が「特例水準再評価率」と呼ばれるようになりました。

「特例水準」に関しては、当初は平成24年度から3年間かけて解消する案が出ていましたが、実現せず、少し遅れて平成25年10月、26年4月、そしてまもなく訪れる27年4月で解消することとなりました。

「特例水準」が解消され、老齢厚生年金の計算式はどうなるかですが、現在(平成26年度)のところ「従前額」の計算式には「特例水準」が混ざっています。
だから、特例水準が解消されても、「従前額保証」が解消されることとは別です。
しかし、「特例水準」の解消は年金額を下げるわけですから、それによって、本来水準の方が高くなれば、「従前額保証」も自然消滅することになります。

どうなうるかはまだわかりません。

2015.3.1

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