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年金額 その5(5%適正化と従前額保証)

年金額 その5(5%適正化と従前額保証)

老齢厚生年金(報酬比例部分)給付水準の5%適正化

現在の老齢厚生年金の計算式に古い計算式がいまだに残っている由来は、平成11年の年金改正まで遡ります。

年金額 その2(老齢厚生年金の計算式①)のページで紹介した老齢厚生年金の年金額の計算式は次の通りでした。

  • 老齢厚生年金の計算式(法律上の正規の計算式)
    (A)平成14年度以前の期間
     平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数(平成15年3月まで)
    (B)平成15年度以後の期間
     平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数(平成15年4月以後)
    老齢厚生年金の年金額=A+B

さて、平成11年改正当時はまだ「総報酬制」が導入されていませんでしたから、Bの計算式はありませんでした。ですから、まず比較する計算式はAの計算式です。
Aの計算式の「7.125/1000」は、もともとは「7.5/1000」でした。

平成11年改正では、老齢厚生年金の年金額の「5%適正化」が図られました。
厚生労働省(当時はまだ厚生省)は「5%適正化」と呼んでいましたが、要するに年金額を5%下げるというものです。
「引下げ」という言葉は使いたくないんでしょう。
「適正化」という言葉の裏には、「今までが高すぎたんだから、適正な水準にするんだよ」という年金官僚の気持ちが読み取れますね(別に批判ではないです。私も同感ですから)。
ということで、計算式上の乗率を7.5×0.95(5%適正化)としたので、「7.125/1000」となったのです。

つまり、
「5%適正化」直前の計算式は
 平均標準報酬月額×7.5/1000×加入月数×1.031
でした。

平均標準報酬月額の算出に用いられる再評価率は、「平成6年再評価率」です。まだ新しい再評価率ができていないので、物価スライドの1.031がつきます。

平成11年改正が施行されたのは平成12年度からですから、平成12年度の計算式は次のように変わりました(最初に紹介した計算式のAと同じ)。

  • 平成12年度当時の(5%適正化後の)計算式
    平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数

平均標準報酬月額の算出に用いられる再評価率は、「平成11年再評価率」(つまり、この当時の最新の再評価率)です。

「5%適正化」前後の計算式を比べれば、当然、適正化前の方が高くなると思いますよね。
平均標準報酬月額に掛ける数値が適正化前の方が大きいわけですから。
しかし、必ずしもそうとは限らないのが年金制度の難しいところで、両計算式では適用する再評価率が違うので、適正化後の平均標準月額の方が適正化前よりも、乗率の低い分をくつがえすほど高くなれば適正化後の年金額の方が高くなる可能性はあるのです。

従前額保証措置

実際は、平成12年度時点では適正化後の年金額の方が高くなるということにはなりませんでした。
ということは、適正化によって年金受給者は前年度よりも名目の年金額が下がってしまうことになります。
そこで、改正に際して、経過措置として「従前額保証」という措置が盛り込まれます。
「従前額保証」とは、改正前の計算式で算出された年金額(=従前額)の方が高ければ、その額を実際の年金額とするというものです。

  • 平成12年度当時の「従前額」の計算式
     平均標準報酬月額×7.5/1000×加入月数×物価スライド率(1.031)

「従前額」の計算式で用いられる再評価率は、改正前の状況を固定化しますから、いつまで経っても計算に使用する再評価率は「平成6年再評価率」(つまり過去の再評価率)です。
ですから、今後賃金が上昇すれば、次の再評価率表の書き換え時には、平均標準報酬月額が上がって、適正化後の計算式による年金額の方が高くなる、そうなれば「従前額保証」という措置も自然消滅する、そんな見通しがあったのだと思います。

しかし、実際には、賃金水準は上がるどころかデフレで下がり続けています。
そうなると、いつまで経っても従前額の計算式の方が高いという状況が続いてしまいます。
そのため、いつまでたっても「従前額」の計算式がなくならないという状況が、少なくとも平成26年度時点までは継続しているのです。
この状況は、老齢厚生年金の計算式が2重にあるというおかしな状況です。

しかも、まだ「従前額保証」という措置が生き残っている間に、さらに年金制度が改正され、老齢厚生年金の計算式はますます複雑化していくのです。

続く

2015.2.20

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