Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

年金額 その4(スライド制)

年金額 その4(スライド制)

物価スライド

年金制度には、物価水準や賃金水準の変動によって年金額を改定する「スライド制」という制度があります。
時代は今でこそデフレで、政府は一生懸命デフレ脱却を試みています。
しかし、年金制度ができた時代はインフレでしたから、物価も賃金も年々上昇していました。
こういう時代に年金額を固定してしまったら、物価が上昇することによって年金の実質的な価値が下がってしまいます。

それで、昭和48年の年金改正で、「物価スライド制」というしくみを導入しました。
当初は、物価変動率(年度平均の全国消費者物価指数)が5%を超えて変動したときに適用されるというものでしたが、平成元年の改正で「完全自動物価スライド制」(物価変動率の大小に関わらず、物価変動率によって毎年度年金額を改定する制度)になりました。

賃金スライド

スライド制には、物価スライドだけではなく「賃金スライド」もあります。
物価スライドが、購買力という点から、年金の実質的価値を維持するしくみとすれば、賃金スライドは、実質的生活水準を維持するしくみといって良いと思います。
もし、物価上昇率よりも賃金上昇率の方が高かったとしたら、賃金の実質的な購買力が上がるということですから、言い換えれば生活水準が上がるということです。
年金額が賃金上昇と同じ割合で上がって行けば、年金にも生活水準の向上分が加味されることになります。

賃金スライドとは、賃金水準の変動を補正する「再評価率」を用いて、老齢厚生年金の年金額計算式の「平均標準報酬月額」と「平均標準報酬額」を算出することによって行われます。
当然、賃金スライド制が適用される年金は、老齢厚生年金=報酬比例部分です。

物価スライドの賃金スライドの関係

平成16年度までは、年金制度の5年に一度の「財政再計算」と呼ばれる大がかりな財政検証(これは今でもやっています)に伴って、基礎年金や加給年金等(以下、基礎年金等に省略)の定額の年金の「法定額」が改定され、同時に「再評価率表」が書き換えられていました。
そして、次の「財政再計算」までの年度では、直近の「財政再評価」以後の物価変動に応じて、毎年度、基礎年金等も厚生年金も物価スライドが適用されます。

つまり、基礎年金等では、5年ごとに法定額が改定され、次の「財政再計算」までは法定額×物価スライド率に、厚生年金では、前の「再評価率」を用いた年金額に物価スライド率を掛けるという計算式になります。
賃金スライドに関していうと、次に「再評価率表」が書き換えられることによって、前5年間の物価スライド率が「再評価率表」に取り込まれることになるわけです。

このような、年金額を経済変動に連動させる方法として、物価スライドと賃金スライドに分かれ、5年ごとに「法定額」や「再評価率表」が書き換えられるというしくみは、平成17年度以降改められることになりました。

平成17年度以降は、老齢基礎年金等の年金額も「再評価率表」も、以前とは少し違ったしくみによって算出される「改定率」に基づいて、毎年度改定されることになりました。
したがって、すくなくとも年金法の世界では、平成17年度以降は、物価スライド率という指標は消滅したはずでした。
経済変動に応じた「スライド」は、毎年度の改定額や「再評価率表」に反映されるからです。

しかし、実際には、平成17年度以降も実際の年金額計算の場面においては、物価スライド率は生き残っています。
この辺が、年金制度を理解するうえで非常にやっかいなところで、年金制度が改正されるたびに、なんらかのしくみが変わるのですが、既得権の保護や激変緩和という観点から、かなりの期間、改正前のしくみの一部が残ってしまうのです。

その結果、年金額の計算式も二重、三重に存在することになり、特に老齢厚生年金の計算式は、平成11年度以前のしくみがいまだに残っている状況です。

続く

2015.2.20

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional