年金給付 その4(加給年金と経過的加算)
年金給付 その4(加給年金と経過的加算)
「加給年金」と「経過的加算」ですが、まずは図を見ていただきましょう。
サラリーマン(厚生年金加入者)は、65歳から「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建て年金が支給されるわけですが、老齢基礎年金は前々回説明し、前回は老齢厚生年金の本体(報酬比例部分)の説明でした。
「加給年金」と「経過的加算」は、老齢厚生年金の本体(報酬比例部分)に加算去れる年金で、普通はこれらを全部あわせて「老齢厚生年金」といいます。
加給年金
「加給年金」とは、年金制度における家族手当のようなもので、年金受給者が扶養する家族を対象として加算されます。加算される側(老齢厚生年金の受給者)の要件は、厚生年金に20年以上加入されていることです。
加算対象となる家族(配偶者と子どもに限定されています)の要件は、子どもは18歳未満、で配偶者は65歳未満です。配偶者の場合はさらに、年収850万円未満で、校正年金加入20年以上の年金を受けていないことも要件になっています。
- 加給年金の額
- 加給年金本体:222,400円
- 配偶者特別加算:164,000円
子どもの場合、2人までは上記の222,400円が加算され、3人目以降は74,100円になります。ただ、普通、65歳になって18歳未満の子どもがいるケースは稀でしょうから、配偶者対象の加給年金の額として、本体と配偶者特別加算の合計額(222,400円+164,000円で)386,400円と覚えておけば良いでしょう。
この額は平成26年度価額で、年度ごとに改定されます。
経過的加算
次に「経過的加算」ですが、この加算は、「老齢基礎年金」の満額が20歳から60歳までの40年に限定されていることに由来します。
ここを読んでいる人がこれから年金を受給する人だとすれば、65歳前に「定額部分」という年金は受給できないのですが、もっと先輩世代の人は65歳前から「定額部分+報酬比例部分」という2階建ての年金を受給していました。
このホームページではまだ説明していませんが、現在の年金制度の正規の年金は65歳から「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の2階建て年金なのですが、旧厚生年金制度では、60歳から「定額部分+報酬比例部分」の2階建て年金が支給されていました。
これをいきなり65歳支給に変えてしまうわけにはいかないということで、措置経過措置として、しばらくの期間は60歳から「特別支給の老齢厚生年金」という年金が支給されていました。
「特別支給の老齢厚生年金」は当初は「定額部分+報酬比例部分」の2階建てでしたが、先に「定額部分」の支給開始年齢が引き上げられ、現在(平成26年度)は、すでに「定額部分」はなく、「報酬比例部分」の支給開始年齢が引き上げられている段階です。
「定額部分」は「老齢基礎年金」と同様定額の年金で、やはり40年加入を限度としていました。ただ、「老齢基礎年金」のように20歳から60歳までの40年という縛りはありません。
現在、すでに定額部分はなくなっていますが、支給されないまでも65歳時点で、計算され、「老齢基礎年金」との差額があれば、「経過的加算」という名称で「老齢厚生年金」に加算されることになっているのです。
要するに「経過的加算」とは、「老齢基礎年金」の代替年金という性格を持ちます。
ですから、厚生年金に1ヵ月(通常60歳以降の期間)加入した場合の「経過的加算」の額(1ヵ月単価)は、老齢基礎年金同様約1,610円になります。この額はやはり平成26年度の額で、年度ごとに老齢基礎年金の満額が改定されれば、それの従ってこの額も変わります。
「老齢基礎年金」のページで、大卒者は満額の老齢基礎年金を受給できないという話をしましたが、60歳以降も厚生年金に加入し続ければ、代わりにこの「経過的加算」が貰えるというわけです。
したがって、大卒者でも60歳以降も働き、厚生年金に40年以上加入すれば、老齢基礎年金と経過的加算を合計して、結局は満額の老齢基礎年金の額になるということです。
見方を変えれば、60歳以降、厚生年金加入期間が40年に達するまでは、年金は老齢厚生年金の本体(報酬比例部分)と経過的加算がダブルで増えるということです。
それ以降は本体だけしか増えませんが、だからといって厚生年金の保険料率が低くなるわけではありません。
したがって、厚生年金の加入が40年経過後の保険料は支給される年金に対して割が悪くなるということもいえるわけです。
2015.01