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巨額の積立金の訳

巨額の積立金の訳

賦課方式では年金積立金は溜まらない

厚生年金、国民年金、共済年金(H27.10から厚生年金に統合)をあわせた公的年金の年金積立金は、平成26年度末で、時価で約200兆円あります。
この額は年金給付費の約4年分ですが、前回述べたように、賦課方式では普通ならそのような巨額の積立金は溜まりません。
前回の繰り返しになりますが、「賦課方式」とは、ある年度に現役世代が支払った保険料を、その年度の年金支給に使ってしまう方式ですから、理論的には「積立金」は残らないのです。
とはいえ、年金支給水準や保険料負担の大きな変動を避けるため、多少の積立金は持っている必要があり、欧州の先進国(財政方式は賦課方式)では概ね年金給付費の1年分を持っていると言われています。
欧州の年金制度と比較しても、日本の公的年金は積立金が多いことは確かです。

しかし、だから年金財政は安心かというと、「賦課方式」は少子高齢化の影響を受けるため、そうとは言えません。
特に日本では少子高齢化のスピードが速いため、欧州の先進国よりも年金財政への影響は大きいのではないでしょうか。

積立方式でスタートした厚生年金

厚生年金保険の財政は、制度発足当初は、積立方式によって運営されていたが、終戦直後の著しい経済変動を経て、昭和29年の制度全面改正期に際しては、財政運営についても抜本的な建直しがはかられた。ここにおいては、従前の積立方式による平準保険料制を一挙に復活することは、被保険者および事業主の急激な保険料負担を伴う等のため適当ではないと判断されたので、この時以後の財政方式としていわゆる修正積立方式を採用し、今日に至っている。(2000年版政府刊行物「保険と年金の動向」より抜粋)

日本の年金制度は昭和18年に厚生年金の前身である「労働者年金保険」としてスタートしました。
戦費調達のためと言われています。
これが戦後に厚生年金になり、さらに共済年金ができ、昭和36年には国民年金ができました。
国民年金は最初から賦課方式でスタートしましたが、公的年金制度の中核である厚生年金は、積立方式でスタートしたのです。
しかし、戦後の急激なインフレで、国民や事業所に「平準保険料」を負担させるのは無理なので、保険料を低く抑えたのです。

「平準保険料」とは、給付に見合った保険料と理解すればよいと思います。
戦後、保険料を「平準保険料」より引き下げたわけですから、当然積立金は本来溜まっていなければならない額より減ってしまいます。
しかし、それでも積立金は溜まっていきます。
年金制度発足初期は、受給者が少なく、また、長期加入者も少ないわけですから、一人一人の年金も低いのです。
対して、保険料を負担する加入者数は受給者に比べて圧倒的に多いので、保険料を低くしても積立金は溜まっていくわけです。
「保険料」については、戦後のインフレ期に低く抑えた保険料を、経済の回復に伴って段階的に「平準保険料」に戻す(保険料引上げ)予定で、これを「段階保険料方式」と呼んでいました。

2000年の「保険と年金の動向」では、財政方式を「修正積立金方式」と呼んでいますが、この言葉には「積立方式が一部崩れた」というニュアンスがありますね。
2006年の「保険と年金の動向」では「賦課方式」という言葉が用いられています。

厚生年金保険の財政は、制度発足当初は、積立方式によって運営されていたが、終戦直後の著しい経済変動を経て、・・・中略・・・。財政方式については、積立方式の考え方を修正し、徐々に賦課方式へ移行してきた。少なくとも、基礎年金が導入された昭和60年改正時には、賦課方式の基礎となる世代間扶養の考え方が公的年金制度の役割として説明されている。(2006年版政府刊行物「保険と年金の動向」より抜粋)

同じ政府刊行物の中で、公的年金の財政方式について、「修正積立方式」、「賦課方式」という二つの用語が用いられていますが、私なりに整理すれば、両者に違いはなく「世代間扶養」という理念との関連で語られる場合に「賦課方式」という用語が使われるのだと思います。
結局のところ、日本の年金制度の財政は、「積立方式」を維持できなかったということで、その状態を二つの用語で言い表しているに過ぎないと思います。
もっとも、最近では「修正積立方式」はほとんど使われていないようですが。

年金積立金との関連性で言えば、公的年金制度は「賦課方式」にしては巨額の積立金を持っている理由として、最初は「積立方式」だったからといえます。
しかし、「積立方式」を維持できていたなら積立金はもっと大きい額になっていなければならないわけです。

2016.4.24

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