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一部繰上げと全部繰上げ

一部繰上げと全部繰上げ

パターン3は繰上げ方法が2種類(一部繰上げと全部繰上げ

前回からの続きです。
年金の繰上げパターン3は、「報酬比例部分の支給開始年齢が60歳、定額部分の支給開始年齢が61歳〜64歳」という年金支給パターンに該当する人の「繰上げ」です。

このパターンでは、報酬比例部分(老齢厚生年金)は、繰上げ可能年齢の60歳時点で支給されますから、繰上げの対象にはなりません。
繰上げ対象の年金は、「老齢基礎年金」ですが、手前に「定額部分」が邪魔をしている形になっているため、定額部分を捨てる「全部繰上げ」と、定額部分を活かす「一部繰上げ」と、2種類の繰上げ方法があります。

このパターンに該当する世代で、かつこれから繰上げをしようという世代は、昭和27年4月2日〜昭和29年4月1日生まれの女性のみで、平成27年度中に62歳か63歳になります。
このことを踏まえて、女性に多い年金の形を例に、それぞれの繰上げを説明していきましょう。

全部繰上げ

まずは全部繰上げですが、こちらは簡単です。
「定額部分」は捨ててしまえば、邪魔な「定額部分」がなくなるので、前回説明したパターン2と同じ、シンプルな繰上げと同じになります。
よって、繰上げ対象の年金は、本来なら65歳から支給される「老齢基礎年金」だけになります。
繰上げ減額率は月0.5%ですから、例えば60万円の老齢基礎年金を63歳から繰上げ受給した場合、2年(=24月)繰上げることになりますから、減額率は0.5%×24月で12%。
60万円を12%減額すれば、52.8万円になります。

この減額率は一生続き、本来の支給年齢になったら本来額に戻るということはありません。
この減額率によって計算された年金額はさらに、物価・賃金の変動によるスライド率によっても改定されます。
物価・賃金の下落により年金額が下方改定(一種のベースダウン)される場合は、上記の金額がさらに下がることになります。
これらのことは、繰上げすべてに共通です。

さて、問題は、なぜ「定額部分」を捨ててしまうかです。
その謎を解くためには、次に説明する「一部繰上げ」と、多くの女性特有の年金の形を理解する必要があります。

一部繰上げ

一部繰上げは、邪魔をしている「定額部分」を残します。

定額部分は、65歳までの支給ですから「有期年金」ですから、生涯受給額は決まっています。
定額部分の生涯受給額を、繰り上げ受給することで増える受給期間で割った額に減額すれば、生涯受給額は変わりません。

例えば、64歳から定額部分が63歳から繰上げ受給するケースを考えてみましょう。
64歳から定額部分が支給される人が、63歳から繰上げ受給すれば、受給期間は2年になります。
もともと1年しか受給できない定額部分を、2年間受給するのですから、年金額を2分の1にすれば、生涯受給額は同じになります。

ですから、このケースでは、まず定額部分の額が2分の1になります。

減額された定額部分と同率の老齢基礎年金は残す

老齢基礎年金ついては、減額された定額部分と同率の部分は残し(繰上げ対象にしない)、残りについては繰上げします。
このように、定額部分の影響で老齢基礎年金を全部ではなく一部繰り上げることになるため、この繰上げ方法に「一部繰上げ」という名称がつけられているわけです。

このケースでは、定額部分を2分の1に減額したら、老齢基礎年金については2分の1を残し、残り2分の1を繰上げします。
そして、繰上げ対象となった老齢基礎年金の2分の1の額に2年間繰上げした場合の減額率で減額します。
繰上げ減額率は、月0.5%ですから、24月で12%減額されることになります。つまり、繰り上げる老齢基礎年金の2分の1の部分は本来額の88%になります。

結果、64歳から定額部分が支給される人が、63歳から繰上げ受給した場合に、63歳から受給できる年金額は、「定額部分」の2分の1の額+「老齢基礎年金」の2分の1の88%ということになります。
65歳から受給できる年金額は、「定額部分」がなくなり、「繰上げ対象とならなかった老齢基礎年金(1/2)」+「繰上げた老齢基礎年金=1/2×88%」となります。

ところで、2分の1だと、残す分も繰り上げる分も同率でわかりにくいので、補足します。
もし、定額部分が3分の1に減額されれば、残す(繰上げしない)老齢基礎年金は3分の1、繰り上げる老齢基礎年金は3分の2になります。

女性の場合

「一部繰上げ」は、「定額部分」と「老齢厚生年金」の年金額が同額であれば、繰り上げた定額部分と繰上げ対象とならなかった「老齢基礎年金」の年金額も同額になりますから、65歳前と65歳以降で年金額は変わりません(物価・賃金等による年金額の改定は別、以下同じ)。
一般のサラリーマン男性の場合、定額部分と老齢基礎年金の年金額はほぼ同額なのですが、女性の場合はかなり異なります。

女性の場合、多くは結婚や出産を機に会社を退職、つまり厚生年金を脱退します。
そして、その後は第3号被保険者になることが多いです。
「定額部分」は65歳から老齢基礎年金に変わるといっても、あくまでも「特別支給の老齢厚生年金」であって、厚生年金ですから、会社勤めが短いと年金額は低くなります。
よって、女性の場合は、「定額部分」が「老齢基礎年金」に比べて、かなり低額になることが多いのです。

すると下図のようになります。

女性の一部繰上げ

繰上げ対象外の老齢基礎年金と定額部分の間に「すきま」がありますね。
この「すきま」は、年金額を示しているので、65歳前の方が65歳以降よりも「すきま」の分だけ年金額が低くなるのです。

試算

先に、63歳から「全部繰上げ」する人の試算例に挙げた人の「定額部分」が10万円だったとして、一部繰上げの試算をしてみましょう。

本来64歳から支給される「定額部分」を63歳から繰上げ受給するので、定額部分は2分の1の5万円になります。
老齢基礎年金60万円のうち、2分の1、30万円を2年間繰上げますから、12%減額されて(88%になる)26.4万円。
計、31.4万円が63歳からの受給額になります。
先の全部繰上げの事例では、52.8万円でしたから、ずいぶん低い額になります。
ただし、65歳になると、老齢基礎年金の残しておいた(繰上げしなかった)30万円+繰り上げた老齢基礎年金26.4万円で、56.4万円ですから、65歳以降は逆に全部繰上げした場合の年金受給額を上回ります。

結局のところ、「全部繰上げ」とは、65歳前から少しでも高い額の年金を受給したい場合にのみ有効で、そのために存在意味があるということでしょう。

2015.8.23

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